JR九州「或る列車」が乗客を虜にするワケ

九州北部豪雨から1年、地域の連帯も活力に

「何よりね、毎週火曜日のお昼12時23分には『ななつ星in九州』がやってきて、うきは駅に停まるんです。で、近くの保育園の子どもたちが『ななつ星』に手を振ったりしてお出迎えをして。それが町にとっての大切な日常だった。だけど、それがあの日から途切れてしまった。地域が沈んでしまう、そんな感じがしましたね」(藤田さん)

「ななつ星」とは、九州各地を巡る”クルーズトレイン”。車中泊をしながら各地の自然や食を楽しむ豪華寝台列車だ。

この「ななつ星」のお出迎えは、保育園が自主的に取り組んでいたこと。それが、いつしか地域全体に広がって「ななつ星」の乗客の間でも話題になり、当初はただ通過するだけだった「ななつ星」が、うきは駅に停車するようになったのだという。うきは市役所で観光促進に取り組む中山和成さんは「決して目的があってお出迎えをしてたわけじゃないんです」と笑う。

うきは市うきはブランド推進課ブランド戦略係 中山和成氏

「雨の日も風の日も、園児たちが欠かさずにずっとやってくれていました。それが少しずつ広がって町の人も参加するようになって。ウチの町の人たちは、みんなそういう人たちばかりなんです。今日、外で子どもたちに会いました? 知らない大人でも、子どもたちはすれ違うときにあいさつしてくれるんですよ。それに、乗客の皆さんは、通過するだけだとしても、うきはに来てくれたお客さま。景色を見て美味しいご飯を食べるのもいいけれど、やっぱりそういう地元の人との交流が思い出に残ってくれるとうれしいな、と(笑)」(中山さん)

こうしたうきは市の姿勢は、もちろんJR九州にも届いていた。今回の「或る列車」特別運行を担当したJR九州の内田鉄朗さんは言う。

「いくらすばらしい列車でも、それは入り口ですから。お客さまに本当に『楽しかった』と思っていただくためには、地域の方のおもてなしがいちばんなんです。私たちは列車を使ってお客さまを目的地までお送りすることはできますが、お客さまの心にずっと残るような思い出を作るのは、私たちだけではできません。それはひとえに地域の方々の力にかかっている。うきはをはじめ、久大本線の沿線の皆さまにはその点で、すごく力になっていただいていると本当にありがたく思っています」

JR九州鉄道事業本部営業部営業課 内田鉄朗氏

スイーツ店の数は日本トップレベル

JR九州とうきは市など久大本線沿線の自治体では月に1回ペースで定期的に情報・意見交換を行う連絡会を設けているという。さまざまな企画が双方から提案されるなど、沿線を盛り上げるための熱のこもった連絡会。内田さんは「今回の特別運行はこれまでの地域とのつながりの結晶」と話す。

確かに、鉄道会社だけ、地域だけでは「或る列車」の運行はかなわなかっただろう。そして、わずか1年での久大本線全線復旧も、だ。

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