ビジネスモデルを進化させるきっかけに 経営戦略としての働き方改革
働きやすさ、だけでなく働きがい、を提供することが大切
最後の「働く人たちの人生観・仕事観・価値観の変化」の視点について説明しましょう。最近は若者の早期離職率が高まっています。有名大学を卒業して大手企業に入社したのに3年もたたないうちに辞めてしまうという人も少なくありません。今の若者は会社に人生を預けようという気持ちはありません。さらに、家族を大事にする人も増えています。見方を変えれば、日本の若者がやっとグローバル化してきたと言えるでしょう。
企業の側から、このような人材に長く勤めてもらうには、働きがいを感じてもらうことが必要です。働きやすさという言葉もよく使われますが、働きやすさは、育児や介護などの制約のある人を支援する制度の整備などを指します。働きやすさは社会の要請であり、働く人の下支えになるものですが、もはや働きやすい職場は前提となり、働きがいがなければ長く続けることはできません。
かつては、課長や部長に出世することを目指すことを働きがいとしていた人も多かったのですが、最近の若者の中には管理職になりたくないという人もいます。また、管理職になりたくてもポストが不足している企業も増えています。一方で、人生100年時代と言われる中、シニア層の人に働き続けてもらうことも不可欠です。ただし、従来の定年延長のような仕組みでは「働きがい」を感じてもらえないでしょう。
いずれも、本人の意思を尊重しながら、将来のキャリア形成を支援する育成や業務経験の機会を与えることが必要です。ここでは、業務に関連する専門知識も重要ですが、留意すべきは、その市場が数年先に存在しているかどうかも確かではないことです。特定の専門分野に偏ると、ある時突然、不要な人材になるといったことになりかねません。その点では、学び直しも重要ですし、リーダーシップやチームワークなども含め、一人のビジネスパーソンとして環境の変化に対応できる基礎的な人間力を磨くことも大切でしょう。
働き方改革が注目される一方で、経営者の中には依然として、「やらなければならないもの」という観点でとらえている人も見受けられます。そうではなく、働き方改革はまさに、ビジネスモデルを変革し、企業を強くする絶好の機会です。ぜひ経営者が本気で、率先して取り組んでほしいと願っています。