ビジネスモデルを進化させるきっかけに 経営戦略としての働き方改革

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「働き方改革」の推進は、今や社会の要請といっても言いすぎではないだろう。具体的な取り組みが求められているが、企業によって、その進捗や成果に差が出てきているようだ。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授の高橋俊介氏は「働き方改革をしなければ人材が採用できないから、といった目先の視点だけではなく、働き方改革を通じてビジネスモデルの変革を実現してほしい」と語る。そのためにはどのような考え方や行動が求められているのか、解説してもらった。

働き方改革をどのような視点からとらえるかが重要

働き方改革はこの2年ほどの間にかなり進んできました。まずは長時間労働の是正で成果を上げている企業が増えてきており、今は、次の一手をどうするかという段階に入っています。たとえば、会議、出張、転勤、さらには通勤時間などの削減もその一つです。ペーパーレス化などもテーマになるでしょう。会議時間の削減などを目標に掲げる企業もあるかもしれません。しかし、ここで大切なのは、これらの表面的な数値の変化だけでなく、働き方改革をどのような視点でとらえるかという点です。

慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科
特任教授 高橋俊介

Profile

東京大学工学部卒。
プリンストン大学院工学部修士課程修了。マッキンゼーアンドカンパニーなどを経て、ワイアット社
(現在TowersWatson)代表取締役社長、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授などを歴任。
2011年9月より現職

私は働き方改革には以下のような四つの視点があると考えています。「健康経営と職場安全配慮義務」「女性やシニアも含めた一億総活躍」「ビジネスモデルの変化への対応」「働く人たちの人生観・仕事観・価値観の変化」です。

「健康経営と職場安全配慮義務」について言えば、まず中高年の加齢に伴う症状と若者のメンタルヘルスの問題は分けて考える必要があります。最近では特に仕事が高度化・複雑化しているために若い社員が追い込まれる傾向があります。かつては、新入社員に単純な仕事を与え、OJT(職場内訓練)で時間をかけて育てていくというのが一般的でしたが、どの企業もそのような余裕がなくなっています。

「女性やシニアも含めた一億総活躍」は、社会保障費の抑制などを視野に入れた政府の取り組みの一つではありますが、企業にとっても今後ますます重要な視点です。労働人口が減っている中で人材を確保するという狙いもありますが、さらに、前述したように、仕事が高度化・複雑化している中においては、正規・非正規の別を問わず、一人ひとりが質の高い仕事をしなければ競争力に大きな差が出る時代になっています。また、経営環境の変化に対応するためには、常にイノベーションを起こし続けることが大切ですが、同質な人材の集団からはなかなかイノベーションは生まれません。その点で、女性、シニア、さらには外国人なども含めたダイバーシティが重要になります。

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