低すぎる!日本のサービス産業の生産性
日本におけるサービス産業の生産性の低さは、かねて指摘されてきた。2007年、その解決を目指して日本生産性本部が設立したのが「サービス産業生産性協議会(SPRING:Service PRoductivity & INnovation for Growth)」だ。サービス産業のイノベーションと生産性向上を推進するための産官学のプラットフォームとして、これまでサービス産業の生産性向上に役立つ情報の提供や知識共有のための場づくりなど、さまざまな支援を行ってきた。
そのSPRINGが、2015年にスタートさせたのが「日本サービス大賞」(委員長:野中郁次郎一橋大学名誉教授)である。「優れたサービスをつくりとどけるしくみ」を表彰する日本で初めての制度で、人々の感動を呼ぶようなサービスから、いままで見たこともない独創的なサービス、地域で輝いているサービスまで”きらり“と光る優れたサービスを幅広く表彰している。サービス産業界のイノベーションを促す優良事例として、多くの企業に参考にしてもらうためだ。
2回目となった今年は、全国から約400件の応募が集まり、内閣総理大臣賞をはじめ関係各省大臣賞、地方創生大臣賞、JETRO理事長賞など合計18件のサービスが選ばれた。
最優秀賞にあたる内閣総理大臣賞を受賞したのは、三菱地所の「街のブランド化に向けた丸の内再構築の地域協働型プロデュース」だ。丸の内エリアのビジネスセンターとしての価値をとらえ直し、「世界で最もインタラクションが活発な街」をコンセプトに、従来のデベロッパーの枠を超え、公的空間も含めた街全体の変革をトータルにプロデュースするサービスである。
特に評価されたのは、エリア内の約7割を占める他の地権者や、千代田区、東京都、JR東日本など公民連携の協議体制を構築したことだ。さらに、ハードとソフト両面から街づくりを進め、土日もにぎわう丸の内エリアを実現した。その取り組みは現在も続いており、日本独自の「場のデザイン」と同時に、グローバルへの普遍性を持つのも大きな特色だ。
「日本サービス大賞」は、受け手の期待を超える価値を提供しているサービスを、多岐にわたる業種において、共通の尺度により定量的・定性的な側面から審査するのが大きな特長だ。企業規模の大小、BtoB・BtoCの別、事業の営利・非営利などは問われない。製造業のサービスも応募可能であり業種も不問だ(行政サービスは除く)。
サービス産業のイノベーションを促進する好事例ばかり
ほかにも、いくつか受賞サービスを紹介しよう。
今回、地方創生大臣賞を受賞したのは4件。アルビレックスグループの「アルビレックスグループによる総合型地域スポーツクラブ」(新潟県)、大垣共立銀行の「”お客さま目線”“地域と共に”の想い『脱・銀行』への挑戦」(岐阜県)、島根電工の「『住まいのおたすけ隊』と業界初のフランチャイズ展開」(島根県)、総合メディカルの「DtoDによる地域医療継続のための『第三者医業継承支援事業』」(福岡県)と、地域も業種も多彩だ。
地方創生は、2015年度から政府の5カ年計画として始まったが、サービス産業においても重要な戦略の一つになる。「日本サービス大賞」においても、地域の活性化の視点で大きく貢献した優秀なサービスを「地方創生大臣賞」として表彰することで、その実現を支援しようとしている。
たとえば、大垣共立銀行は、年中無休のATMや移動店舗、ドライブスルー店舗、手のひら静脈認証だけでの取引など、業界初のさまざまなサービスを顧客目線で実現。地域の顧客満足を高めるとともに地域経済を活性化していることが評価された。
一方、神奈川県秦野市の鶴巻温泉で、創業100年近い歴史がある陣屋は、倒産の危機を自社開発のクラウド型旅館管理システム「陣屋コネクト」で打開。300を超える他社施設にも提供し、各旅館の個性を保ちながら経営改革を支援している。この「旅館・ホテル経営をITの力で改革する『陣屋コネクト』」が、総務大臣賞を受賞した。
人口減少による人手不足は、サービス産業においても深刻化している。旅館・ホテル業においても同様で、それは事業継続を左右するほどだ。だが、老舗の旅館などでは依然として勘と経験に依存するところが目立つ中で、サービスの質と生産性向上をICTの活用で実現した点が評価された。
新たに設けたJETRO理事長賞は、グローバルな展開で著しく成功した、優秀なサービスを表彰するものだ。初の受賞となったのはキュービーネットホールディングスの「日本式カイゼン教育でグローバル展開を成功させた理美容サービス」である。
同社は10分・1000円(税別)のヘアカット専門店「QBハウス」を運営する。現在、国内に500店舗以上があるが、すでに海外でも約120店舗を展開。効率と品質を追求した「日本式カイゼン教育カリキュラム」で、労働集約型である理美容サービスのグローバル展開を成功させた点が評価された。
ここですべての受賞サービスの詳細は紹介できないが、いずれも実際に事業として経済的継続性(収益性)が担保されているだけでなく、人材の雇用や地域・社会の活性化にも貢献しているのが特色。まさにサービス産業のイノベーションを促進する好事例と言えるものばかりだ。
6月28日に行われた表彰式に続いて、今後は受賞者の取り組みや工夫を共有する「日本サービス大賞フォーラム」も開催される予定だ。他社の優れた取り組みを知り、自社のサービス向上を実現したいと考える企業にとって絶好の機会になるに違いない。