ふるさと納税、今問われる「真価」とは? 豪華な返礼品は、魅力の一部に過ぎない

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ここ数年で利用者が激増し、年々注目を集める「ふるさと納税」。全国の寄付総額は2016年度時点で年間2844億円に達した。各地の特産品や体験型のアクティビティなど魅力溢れる返礼品が話題を呼ぶ一方、加熱する「返礼品競争」に賛否両論があるのも事実。制度の本質はどこにあるのか?多くの寄付者が利用するふるさと納税サイト「さとふる」の取締役 兼 COO 地域協働事業推進部部長に話を聞いた。

制度開始から10年経過。震災を契機に全国へ浸透

「ふるさと納税が始まって10年経ちますが、利用経験者は制度認知者のうち1割強程度。残りの8割以上に制度の良さが伝わっていないのは、非常に惜しいことだと感じています」と語るのは、「さとふる」取締役 兼 COO 地域協働事業推進部部長の青木大介氏。同社は、ふるさと納税サイト「さとふる」を運営している。

進学や就職などによりふるさとを離れた人々が、「恩返し」の意味を込めて出身地の自治体に納税できる制度を、との考えから2008年に制度化されたふるさと納税。15年には税額控除される寄付額が約2倍になるなど、いくつかの制度変更を経て現在に至っている。

大きく広まったきっかけの一つは、11年の東日本大震災だった。迅速に被災地に支援金を届ける寄付方法としてふるさと納税が話題となり、認知が高まった。今では、全国の自治体が寄付による財源確保のほか、地域のPR、地元産品のブランディングを目指しふるさと納税を活用している。

取締役 兼 COO 地域協働事業推進部 部長
青木 大介

制度を支援する同社の思いについて、青木氏はこう語る。「制度により自治体に財源が生まれ、新しい取り組みや投資ができるようになったのは喜ばしいことです。しかし規模の小さな自治体では、返礼品の準備や送付、その地域の特色に合う特産品探しなどの業務に対応する人的リソースを割けないケースが多いのが現状です。

であれば、煩雑な手続きや返礼品の準備は私たちが担おうと考えました。自治体の方々には、寄付金をより良く活用し地域に役立てる業務に時間を費やしていただきたい。当社はふるさと納税サイトの運営だけではなく、ふるさと納税にかかわる自治体様の業務を一括代行することで地域の『継続的な発展』を支援する企業です。各自治体とともにその地域の魅力を掘り起こし、全国の寄付者にその地域のファンになって、応援し続けてもらえるよう願っています」

離れた土地の人と人がつながる温もり

「さとふる」では自治体に代わって返礼品事業者の開拓を行ったり、地域の事業者と返礼品開発も行っている。またサイト上には寄付先の自治体や返礼品とともに、生産者の声やその土地の魅力が多数掲載されている。つい豪華な返礼品に目が行きがちな寄付者も、生産者のメッセージを読み、地域の魅力を知れば、親近感を持たずにはいられないだろう。

返礼品を受け取ったり寄付先の地域を訪れて感じるのは、単なる「お得感」だけではない。その先にいる現地の人々の思いや熱意、温かさに触れることこそ、ふるさと納税制度の醍醐味と言えるだろう。実際、受け取った返礼品に感動して事業者に直接電話や手紙を寄せる人や、その特産品のファンになり定期的に購入する人も出ているという。

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