住宅ストックを活かす時代の
大規模修繕が抱える問題とは
リフォームや改修の方向が主流に
一部のマンションを別にすれば、多くのマンションは築後40年くらい経過しても、躯体そのものはしっかりしています。耐震性の問題がないところも多く、水まわりを改修すればまだまだ長く住むことができるのです。しかしマンションの大規模修繕で一番大きなコストがかかるのが、実は水まわりなのです。
そうしたマンションに対しては補助金などで資金援助すればいいという考え方もあります。けれども戸建て住宅の場合は、居住者が自己責任、自己資金で修繕や建て替えをします。マンションだけに資金援助するという考え方がはたして支持されるかどうか、疑問のあるところです。そのような現状ですから、修繕業者を選ぶ際には、限られた費用の中で最大の効果を得られるよう、しっかり検討する必要があるでしょう。
マンションの大規模修繕を団地単位で行う場合には、居住サービスという視点を入れるのが理想形かもしれません。子育て支援のサービスなどは十分なニーズが期待できます。
高度成長時代以降、日本は生活スタイルがどんどん変わっていきました。住宅設備もどんどん新しいものが開発され、進化し続けてきました。人口も増え続けてきたので、住宅もどんどん建て替えられてきました。しかし人口減時代の今は、住宅ストックを活かすことが求められています。その方向で考えれば、これからはリフォームや改修の方向が主流になっていくものと思われます。ここまで触れてきたような問題をどう解決していくか。これからはマンションの大規模修繕も、情報提供などを中心として住宅政策のなかにきちんと位置づけて考えていく必要があるでしょう。
小林重敬(工学博士)
東京都市大学都市生活学部教授
横浜国立大学名誉教授