住宅ストックを活かす時代の
大規模修繕が抱える問題とは
分譲マンションの建て替えは難しい
一方で、人口減少が世帯減少となり、住まい方を選ぼうにも市街地そのものが縮減していくということが現実味を帯びてきています。しかし、郊外には、20世紀に社会資本整備によりつくられた共同住宅形式を中心とした質の高い住宅団地が数多くあります。人口減時代のなかでそうしたものを活用しないのはもったいない。それをうまく活かしていくこともこれからの大きな課題だと思います。
区分所有という形を取っている分譲マンションは、建て替えが非常に難しいという現実があります。区分所有の関係を解消するには全員の合意が必要ですし、それでなくとも建て替えについての合意形成は難しいのが現実です。実際、分譲マンションの建て替え事例は、震災関連を除けば、まだ100件を超えていないくらい難しいことです。しかも仮に合意が得られたとしても、資金の問題が出てきますし、60年代は今より建築に関わる規制が緩やかだったため、現在の規制に対応するように建て替えると、居住面積が足りなくなってマンションの住民全員が住むことが難しくなってしまうといった問題も発生しがちです。
そうした場合も含めて当然、マンションが老朽化したときには大規模修繕するということが選択肢の一つになります。立地などの条件がよいところは、大規模修繕によって資産価値を維持することも可能でしょう。
しかし、ここでも大きな問題があります。住民全員が大規模修繕に賛成するところは例外的ですし、空き室があったり、修繕するなら引っ越すという住民が出てきたりすることもよくあります。私が会長をしているマンション再生協議会が数年前に実施した関係専門家に対するアンケート調査では、大規模修繕の資金を確保しているところは50%ほどしかありませんでした。長期の修繕計画さえないマンションも珍しくありません。さらに郊外の小規模マンションなどでは、管理組合さえないところもあるのが実情です。かといって放っておいては老朽化は進む一方ですし、安全で住みよい暮らしを維持するために不要不急な所以外だけでも修繕をしておくべきでしょう。