日産ノートe-POWERを家族のために買う話 試乗しないとわからない「心が動く」乗り心地
「簡単に言えば、ブレーキで止まる時の力を電気に換え、バッテリーに充電できるんです。ある程度減速するとブレーキを踏まなくてもブレーキランプが点灯しますから安全です」
なんか、新しい乗り物に乗っている。ペダル一つで加減速が自在だ。「それにさ」と後部座席の愛が指摘した。
「静かだよね、車内。前に乗ったクルマもレンタカーのクルマも、こんなに静かじゃなかった気がする」
「確かに!」
営業スタッフの説明によれば、エンジンが発電時にしか作動しないことが大きいという。発電する時以外はエンジン音がしないのだ。
「ほーーーー!」
気がつけば、興奮しているのは愛ではなくて大輔だった。大輔は、運転しながら、このクルマを買うつもりであることが自分でもよくわかった。
上りも下りも自分の意思どおりに操れる
「ただいまー」
「……」
「たらいまー」
ノートe-POWERでの初旅行は2泊3日で長野にしたが、その帰り道はとんでもない渋滞につかまり4時間半のロングドライブになってしまった。
これまでもレンタカーで旅行をしていたが、今回からは返却時間を気にせず、気の向くまま自由に寄り道もできる。だが、手にしたばかりの「自由」が落とし穴だった。
今回の旅で、大輔は明らかに浮かれていた。過剰に予定を詰めて、いろんなスポットへ出掛け、大量の写真を撮った。観光地を楽しむよりも、クルマで移動することに目的があるようだった。
そして極め付きは帰る間際だった。前日のそばがうまかったと言って、愛の反対を押し切りそのそば屋へとクルマを走らせたのだ。そして、大渋滞にはまった。帰り道の愛は終始不機嫌だった。
「蓮はもうネンネですよー」
息子を寝かしつけてリビングに戻ると、愛がビールの用意をしていた。不機嫌ながらも、一人で飲まずに大輔を待っていてくれたようだ。
「お疲れさまでしたー。かんぱーい」
「ホント疲れたよ。こっちに戻ってからご飯にすれば渋滞にだって巻き込まれなかったのに」
「おっしゃるとおり! でもさ、あの渋滞、運転アシスト機能※4がなかったら、どんだけキツイんだろうね? いいクルマ選んだよなー」
なんとか会話を明るい方向へ持っていこうとしながら、大輔は別のことを考え出していた。確かに渋滞の高速道路も楽だったが、高原を巡るドライブルートは気持ち良かった。景色がいいだけでなく、上り坂を力強く、思いのままに加速できた。
しかも下り坂では回生ブレーキで電気を貯められる。これがまるで貯金をするような、地球にいいことをしているような感覚だから面白い。
「なんかちょっとつまみたいね」
愛の言葉でふいに現実に戻る。
「ただいま用意するであります!」
敬礼をしてから冷蔵庫を開けると、そこにはあの売り上げNo.1のウインナーが入っている。
「あれ、ウチのウインナーの定番はこれに変わったの?」
「うん、だって、なんて言うか……。おいしいでしょ」
「ほらね、No.1はやっぱり満足度が高いんだよ。俺、このウインナー見た時に、遠野家に欠かせないものになるって直感が働いたんだよね――」
大輔が誇張気味にそう言うと、愛はようやく少し笑った。
※4 インテリジェントクルーズコントロール/インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)/LDW(車線逸脱警報)。先行車との車間を自動で保ちながら走行。車線を逸脱しそうな場合はブザーなどでドライバーに警告し、自動でクルマを車線内に戻す力を短時間発生させ、ドライバーがクルマを車線内に戻す操作を促す