日産ノートe-POWERを家族のために買う話 試乗しないとわからない「心が動く」乗り心地

クルマがなくても何とかなる?
「えーっと、ウインナー、ウインナー……、お、ここか。いつものウインナーはどれだっけ。あれ、これは本数が多くてお買い得だな……、待てよ、こっちは『売り上げNo.1』か。売れてるんだから満足度も高いんだろう。よし、これにしよう」
妻の愛と2歳の息子・蓮に合流し、大輔は先ほど見つけたウインナーをかごに入れる。だが、かごの中のものを見るなり、愛が口をとがらせた。
「いつものウインナーと違うんだけど」
「そんなこと言われても指定してくれないとわかんないよ。でも、売り上げNo.1らしいから、失敗はしないでしょ」
大輔の言い分ももっともだ。普段から目にしているとはいえ、似たようなものを並べられるとどれも同じに見える。
「毎朝食べてるでしょ」
不機嫌スイッチが入った愛は、別の話を切り出す。
「ねぇ、やっぱりクルマ買おうよー。歩いて5分っていっても蓮を連れて、これだけ買い物して手で持って帰るの大変だし」
「それはわかる。俺もそう思う。でも、実際クルマがなくても何とかなってるじゃん」
ここ数カ月繰り返されている議論は、いつも平行線をたどるばかりだ。
大輔と愛がこの街にマンションを購入したのが半年前。駅までは徒歩10分、スーパーも徒歩5分。都心へのアクセスも良く、住みたい街としても注目され始めていることもあって、マンション購入権の抽選が当たった時には2人で大喜びしたものだ。しかも、自宅からは離れるものの、「保活激戦区」とされる地域で保育園の確保に成功。そのため、愛も再び働き始めることができた。
「それに、蓮の教育費を貯めないとならないし。中学から私立に入れたいって言ったのは愛だろ」
レジを済ませたあと、大輔は議論を打ち切るようにそう言うと、まだ足元のおぼつかない蓮の小さな手を取った。
都内のメーカーに勤めるビジネスパーソンで、35歳になったばかり。妻の愛とは友人の紹介で知り合い、結婚5年目。新しいものは好きだが、慎重な性格のため、評価が定まってから動くタイプ。「シェアNo.1」「売り上げNo.1」を好むものの、No.1が好きというよりは、No.1のものであれば失敗しないだろう、という考え方に基づく。長男・蓮(れん)の名前は、ある調査によればその年のランキング1位。
そんなある日、大輔が夕食後にパソコンで調べ物をしていると、ふいに愛が話しかけてきた。
「この前、蓮の保育園のお友だちが深夜に熱を出して、クルマで病院に連れていったって。やっぱりクルマがあると便利よね~。蓮が急な病気になってもおかしくないし」
「だけど、蓮の教育費もそろそろ考えないと……」
「むしろクルマがあれば、雨の日の保育園の送迎も買い物も楽になるから、私も働きやすくなって貯金が貯まるかもよ?」
「……」
「それに、本当は大輔だってクルマ買いたいんでしょ? 最近、ウチのパソコンでネットすると、いつもクルマの広告が出てくるんだけど。その画面にも出てるけどさ」
しまった。たまに隠れてクルマのサイトをチェックしていたから、完全にリターゲティング※1されていた。目の前のパソコンの画面にも、デカデカとクルマの広告が出ている。
「コンパクトカーを見てるみたいだけど、それなら私も運転しやすいから助かるな~」
そう言って愛はリビングから出て行った。
※1 リターゲティング広告:検索サイトなどから訪れた訪問者に、再度広告を表示させるもの。クルマの情報を検索すると、クルマの広告が出やすくなる