今の日本は、災害時に弱者に寄り添えるか? 防災を学べば「何が足りないか」が見える

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防災リーダー養成のため避難所体験も行う

「防災を学ぶことは、この国で生きていく力を学ぶことでもあります。それが防災教育の意義なのです。この国の防災のレベルを上げていくには、まず防災文化を変えなければなりません。興味深いことに今、国は“防災”とは言わず、東日本大震災以降、“減災”と表現するようになりました。人間の力と技術の力で災害を抑え込むのが防災ですが、東日本大震災ではそれができなかった。だからこそ、災害は起こるものとして考えたうえで、いろんな対策を組み合わせて、被害を減らしていかなければならない。それが減災なのです。しかし、一人ひとりが防災について真剣に考えないかぎり、減災は一歩も進みません。危険があったら避難して、危険が去ったら戻ってくる。それが当たり前にできる社会をこれからつくっていかなければならないのです」

「防災士」資格を推奨、就職でもメリットに

災害は誰にとっても他人事ではない。防災教育という、この国で生きていく力を地域だけでなく、学校教育にも取り入れることで、将来的に日本の防災文化を変えていく。国士舘は、その実現に向けた長期的な取り組みのスタートを今切ったのだと山﨑氏は強調する。

「防災教育の理想を言えば、人間が生きていくうえで、どうしたらいいのか。その手立てをすべて考えるレベルにまで持っていく必要があります。今、世の中では危険が迫っていても、一人で逃げられない高齢者の方々が増加しています。一人で逃げられない人をみんなで助けるためには、地域コミュニティがしっかりしていなければなりません。そして実際に、みんなで助けるには、その仕組みづくり、実践するための訓練が必要です。そうしたことを地域、または企業から考え、地域の課題を解決することができるリーダーを育成していくことが国士舘の役割だと思っています」

そんな国士舘の防災教育の大きな特徴は、通常の講義に加え、特定非営利活動法人である日本防災士機構が認定する「防災士」の資格と連携していることにある。防災士とは、地域や企業で防災リーダーを目指す人のための資格である。国士舘では大学の「防災リーダー養成論」および「防災リーダー養成論実習」の単位取得者は、防災士の受験資格を得られるようになっている。

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