今の日本は、災害時に弱者に寄り添えるか? 防災を学べば「何が足りないか」が見える

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国士舘大学スポーツ医科学科では、救急救命士の国家試験受験資格を取得できる

国士舘大学が今年4月から全学部で防災教育をスタートさせている。近年、地震や台風など災害頻度が増していく中、地域コミュニティを中心に、地元に貢献できる防災リーダーの育成が叫ばれている。そのため国士舘では、学生に地震のメカニズムから、避難所体験、被害者の心のケアまでを幅広く学ばせることで、防災を実践できる人材の育成を目指していく。今、防災教育に力を入れる意義とは何か。また、その特徴について、国士舘大学の防災・救急救助総合研究所教授を務める山﨑登氏に話を聞いた。

防災を学ぶことは「この国で生きていく力」を学ぶこと

行政、教育、警察、消防などを中心に多くの人材を輩出してきた国士舘大学。2000年には4年制大学としては初めて救急救命士を養成する「スポーツ医科学科」を開設するなど、いち早く医療・防災問題に対する社会的要請に応えてきた。そんな国士舘がさらに一歩進めて、全学部に防災教育を導入する理由とは何か。元NHK解説委員で自然災害を担当し、現在は国士舘大学教授として防災教育の指導に当たる山﨑登氏は次のように語る。

「防災を実践していくには、地震のメカニズムや救急救命の知識を知っているだけでは足りません。今の被災地を見ると、圧倒的に亡くなっているのは高齢者です。抵抗力が弱く、持病がある方も少なくない。避難所の体育館では1人1畳のスペースで過ごさなければならず、ストレスのため亡くなってしまう場合も多い。それを防ぐには、地震や救急救命だけでなく、福祉も介護のことも知らなければなりません。防災は極めて学際的な分野です。さまざまな分野の専門家が防災に関わってこそ、日本の防災は底上げできる。国士舘大学はその一翼を担うことで、日本の防災実践力を高めていきたいと考えています」

もともと国士舘には伝統的に、警察、消防といった防災機関に多くの人材を送り出してきた実績がある。これまで蓄積してきたノウハウをもとに今回スタートさせた防災教育でも、地震、救急救命といったメインの分野だけでなく、建築、福祉、災害ボランティアなど全学部の中から専門家を集結させ、学際的に進めていくという。

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