グローバル化が叫ばれる中、英語を公用語にする企業も増えてきた。その一つに、クラウドセキュリティなどのサービスを開発・提供するHDEがある。今回はHDEにお邪魔して、英語公用語化の実際とホンネを聞いてみた。対応してくれたのは、クラウドセールス&マーケティング ディビジョンでディビジョン副統括を務める三宅智朗さんと、ビジネス・アドミニストレーション・ディビジョンのセクション統括を務める新井めぐみさんだ。
スタートは、TOEIC「ほぼ0点」
東洋経済(以下、東経):こんにちは。今日はよろしくお願いします。
HDE三宅さん(以下、三宅):こちらこそよろしくお願いします。
東経:まず三宅さんのお仕事を紹介していただけますか。
リニューアルセールスセクション ディビジョン副統括
兼 セクションマネジャー
三宅智朗さん
三宅:営業部隊の統括と営業事務の取りまとめをしています。営業部隊は国内向けなので、お客さまは日本の企業で対外的には日本語で仕事をしています。一方、営業事務部隊はグローバルの事務も受け持っているので、社員には外国籍のメンバーも多くいます。
東経:英語が公用語になったのはいつですか?
三宅:公用語になったのは2016年10月ですが、その2年以上前に「英語を公用語化する」という宣言がありました。もともと英語はまったくできなかったので正直、プレッシャーでしたね。
東経:まったくできなかった、というのは、失礼ながらどの程度だったのでしょう。
三宅:宣言の後で、TOEICの試験を社員が全員受けることになって、そのときの点が270点だったんです。TOEICは990点満点で四者択一の問題形式でして……、この意味わかります?
東経:四択であれば、適当に答えても1/4は当たる……。
三宅:そうです。回答欄を埋めさえすれば250点ぐらいは取れるのに、270点(笑)。ほぼ0点のような状況でした。
東経:それで勉強を始めたんですね?
三宅:英語ができて損はないですし、強制力がないとなかなか勉強しないですよね。背中を押してもらういいチャンスだと思いました。それで、オンラインのスカイプ英会話レッスンを受けられる「QQ English」を始めました。
HDE新井さん(以下、新井):ちょっと横からすみません。人事の新井です。QQ Englishは会社が全額サポートして社員は費用負担なく勉強できるようにしているんです。会議室も就業時間以外は解放しているので、朝や夕方には誰かしらが英語のレッスンをしています。
三宅:私は、フィリピン人と会話をするカリキュラム(QQE Basics)を始めたんですが、実は3カ月ぐらいで一回やめてしまいました。理由はレッスン内容ではなく、レッスン最初と最後にある雑談なんです。何を言っているのかまったくわからず、それがストレスで…。
東経:背中を押してもらっても続かなかった、と。
三宅:ただ、一方で、HDEの社内にもグローバルメンバーと呼ぶ外国籍の社員が増え始めていましたし、役職が上がってきたことが危機感を高めました。リーダー、マネジャーとなるにつれて、他部門とのやり取りが増えて、レポートや発表を英語でする必要が出てきました。グローバルメンバーの発表を聞いて英語でコメントする必要も出てきました。


新井:また説明させてもらいますね。HDEでは、評価制度、人事考課にTOEICの点数が関係しています。新卒から部長クラスまでの5段階の「段」があり、それぞれの昇段にTOEICの一定の点数が必要です。足りない場合は、点数を目標設定として掲げて勉強します。とは言っても、当社に入ってから勉強すれば問題ありませんし、三宅の言うように役職と共に仕事で英語の必要性も高まりますから、自然と勉強する気になるものです。
三宅:そうして必要に迫られるようになり、再度QQ Englishも始めました。今度は違うカリキュラム(カランメソッド)に取り組んだところ、自分に合っていたようで今度は勉強が続いています。最近では、TOEICの点数も660点まで上がってきました。
東経:スタートから倍以上!
「お酒を飲みながら」だからこそ学べる
東経:英語の勉強のために工夫していることはありますか。
三宅:グローバルメンバーが増えているといっても、英語を使う必要があまりない職種もあります。そこで私が主催して、お酒を飲みながら英語で話をする場として「マンスリーセールスセッション(MSS)」を営業部隊向けに毎月実施しています。
グローバルメンバーや英語が話せる日本のメンバー、そして英語を勉強したいメンバーが参加して英語でコミュニケーションを取る場です。お酒が入るので盛り上がりますし、仕事以外の話もできるので良い機会になっています。TOEICでは、「ランチ食べた?」とか「飲みに行こうよ!」といった勉強はできないですから。
新井:あと、会社全体としてはコミュニケーションランチというものもあります。コミュニケーションを活性化する施策として昨年から始まったもので、隔週でオフィス内にケータリングサービスを呼び、アルバイト、派遣、社員など、誰でも参加OKとなっています。もちろん英語で話すので、この場も英語学習に役立っています。
東経:みなさん、英語に対する意識は高いんでしょうか。
三宅:確かに高い人が多いですが、だからといってすべてうまくいくわけではありません。実は、朝の勉強会も開催しているんですが、これは本気すぎたためか、だんだん参加者が減ってきてしまっています。福利厚生だよ、おカネかからないよ、と言っても、モチベーションを維持して日常の勉強につなげるのは難しいところです。楽しい方向に持っていくような努力が必要だと実感しています。
東経:楽しい方向と言えば、セブ島での英語学習合宿もあるんですよね。
三宅:1カ月のセブ島での学習が用意されています。英語の勉強をしながら、懇親したり週末にはセブ島を満喫できたりと楽しい場のようです。私も今年セブ島に行ったんですが、仕事の関係で1週間しかいられず、ずっと英語の勉強だけで楽しむことができなかったのが残念です。それでも、一切日本語を使わずビジネスコースの勉強をしたことで、英語に関してはブレークスルーしたと感じています。
失敗を責めず「チャレンジ」を認める
東経:では新井さん、そもそも英語を公用語にするきっかけは。
ヒューマン・リソース・セクション セクション統括
新井めぐみさん
新井:2011年頃からグローバルメンバーの採用を始めているんですが、グローバルメンバーが入ると就業規則や社内の通達を英語にしなければならないことに気づきました。それなら英語を公用語にしましょうと。コミュニケーションのツールとして社員がみな英語を使えるようにしましょうということになったんです。
東経:そうは言っても、苦労する人もいたんじゃないですか。
新井:そのとおりです。英語がネックになったり、会社の変化に対応できなかったりして、辞めていった社員もゼロではありません。でも、「変化に追従する、勉強して対応する」というスキルを求める社風が、今では確実に受け入れられてきています。TOEICの全社員の平均点も、2013年には500点に満たなかったんですが、16年に600点を超え、18年2月には700点目前まで上がってきました。
東経:みなさん勉強することが習慣になっているんですね。
新井:はい、基本的に入社の段階で求めるのは「勉強する意志」であって、高い英語力ではありません(人事、経理などの特定の職種は除く)。さらに言えば、英語に限らず、HDEでは「学び続ける人材を育成する」ことを目標にしています。英語でも事業でも、真剣に取り組んで失敗したとき、失敗を責めることはしません。挑戦することを推奨する企業文化を徹底しています。
三宅:実は、私もいくつか失敗をしています。その一つは、大企業向けのサービスを、中小・中堅向けに改修して販売するものだったんですが、一つひとつが小さい案件になる予定だったので、効率化したシステムを用意していました。事前にコストをかけたにもかかわらず、全然売れなくてすぐ撤退となってしまいましたが、その失敗をとがめられたことはありません。むしろ、その効率化したシステムが「ほかでも使えるんじゃないか」と言われたぐらいです。
新井:ですから、英語だけでなく、さまざまなことにチャレンジしてそこから新しいことを得る精神を持った人と一緒に働けるとうれしいですね。
東経:挑戦するという社風、よくわかりました。今日は、ありがとうございました。
三宅、新井:ありがとうございました!