結果を出す企業に必要なIT環境とは? ITジャーナリスト津田大介氏が語るDX
前述したように、デジタル化とは本来、このような目的を実現するために導入するものです。あくまで「ツール」なのですから。本当の意味での「働き方改革」を実現するには、経営と社員の間をつなぎ、翻訳するような役割の人材が必要でしょう。CIO(最高情報責任者)をトップとするチームなどが、システムの導入や運用だけでなく、広い視野で自社のデジタル化はどうあるべきかを検討し実践することも大切です。
現場の声を生かし、IT環境の整備を迅速に進めるべき
―― DXの進展や働き方の多様化などにともない、社内の情報共有はどのようなことに留意すべきでしょうか。またビジネスに貢献するIT環境をどのように整備すべきでしょうか。
津田 情報共有を「しなければならない」と考えると、社員の方の負担感も大きくなります。さらにそのために労働時間が増すようであれば本末転倒です。情報共有のポイントは、「簡単に蓄積できること」、そして、「誰もがどこでも情報にアクセスできること」です。
たとえば組織の名刺情報の共有について、私も20年ほど前から取り組んでいますが、当時は、スキャンした名刺を光学式文字読み取り装置(OCR)で取り込み、専用のパソコンソフトで閲覧するといったようにかなり手間がかかりました。当時は社内全般で共有するソリューションでいいのがなく個人個人が情報を貯めていましたが、クラウド名刺管理サービスのSansanが出てきて組織全体で共有でき、スマホやタブレットから、どこにいても簡単にアクセスすることができる。データもクラウドで保存されていて、ようやく働く環境に最適化したソリューションが出てきたと思います。
また、仕事をしていると外部の方に連絡したときに、御社の誰々さんからすでに連絡をもらっています、といったやりとりは誰にでも経験があることだと思います。こういうことがなぜ起きるのかといえば、社内コミュニケーションが徹底されていないからです。「いつ」「誰が」「どこに」連絡したのかなど、「組織全体で名刺情報の共有」とともにそれに付随した情報も共有されていれば、ミスコミュニケーションによる無駄な時間を省くことができます。
Sansanの法人向けクラウド名刺管理サービスを使えば、どの部署に、いつ、誰が訪問したのかがすぐにわかり便利だと思います。とても使いやすいインターフェースなので多くの会社にとって導入しやすいツールと言えます。導入してしまえば、あとは勝手にデータが貯まっていき、さまざまなビジネス用途にも使うことができる。今まで個人にひも付いていたデータを組織全体で共有することで、全社員の生産性がかなり変わってくるでしょう。
情報共有ツールに限らず、最近のITソリューションの多くはクラウドを活用し、安価に導入できるようになってきています。そのため、以前のようにIT投資がリスクになりにくいので思い切ってやってみるのも重要だと思います。
IT環境の整備で大切なのはスピードです。中国でスマホ決済が普及し、キャッシュレス社会がものすごい勢いで進行した例を見てもわかるように、わずか数年で市場ががらりと変わってしまいます。現場の声を尊重し、必要なソリューションを迅速に導入することが重要です。それでダメならまた別のものにすればいいのです。
日本企業は意思決定のスピードが海外企業に比べて遅い点は指摘せざるをえませんが、通信インフラなど、土台としてのポテンシャルは海外企業より優れた面もたくさん備えています。キャッチアップするための材料はたくさんあるので、それをできるだけ早くとらえて、競争力向上につなげてほしいと考えています。
■Sansanの法人向けクラウド名刺管理サービス
名刺情報の共有化により、「営業のチャンスが拡がる」「社員の生産性があがる」「組織のコミュニケーションが進化する」の3つの価値を企業にもたらす。