結果を出す企業に必要なIT環境とは? ITジャーナリスト津田大介氏が語るDX
最近、企業で情報システム部門に勤める方が経営者から「うちもAI(人工知能)やビッグデータで何かやれ」と言われて困っているという冗談めいた話を聞くこともあります。大切なのは、特定のテクノロジーを導入することがゴールではなく、そのテクノロジーを活用して何をするのかという目的です。言い換えれば、DXで重要なのは、わが社は今後何でバリューを出していくか、明確に意識することが重要ということです。その点では、DXは情報システム部門だけでなく経営者の重要なテーマと言えます。
働き方改革を実現するためにも、デジタル化が重要に
―― AIやロボットの導入により、社員の働き方も大きく変わる可能性がありそうです。「働き方改革」も注目されていますが、ポイントはどこにありますか。
津田 AIやロボットを導入することで、人間の仕事を奪われることになるという声もありますが、それは誤りです。確かに、AIやロボットを活用することで、ルーチン作業は人間がやらなくてもよくなります。その代わりに、人間はより付加価値の高い、人間にしかできない仕事をすればいいのです。
実際に、ドイツの金属労組ではインダストリー4.0構想が出てきた際に、AIやIoTの現場導入に対して「人減らしの口実に使ってはならない」とくぎを刺し、最新技術が労働環境改善に寄与するよう政策決定の議論に積極的に参加しています。さらに、デジタルが苦手な労働者向けの研修なども行っています。
日本における「働き方改革」では、長時間労働の是正や柔軟な勤務形態などが提唱されています。単に残業を減らすだけでなく、通勤電車の混雑のストレスなど、労働生産性向上をさまたげるさまざまな課題にトータルに取り組む必要があるでしょう。混雑した通勤電車に乗らなくてもいいという点では、リモートワークなども課題解決の選択肢の一つになります。
―― 優れた人材の採用、確保のためにもデジタル化の促進がカギになりそうですね。
津田 そのとおりです。いくら会社や仕事が好きだからといっても、朝から晩まで滅私奉公のように働かなくてはならないというのでは続きません。子育てや介護でやむなく退職せざるをえないということもあるでしょう。そこで、週に3日は自宅で仕事ができるという仕組みができているのであれば、長く勤めてもらうこともできるはずです。