
「人生100年時代」とも言われる中、ビジネスパーソン一人ひとりが付加価値を生み出し続けるには、将来を見据えたキャリア形成が重要になる。その課題に応える働き方として注目されているのが「無期雇用型の技術者派遣」だ。若年層からシニアまで安定してキャリアを積めるだけでなく、高度な技術力を活かし、市場環境の変化に合わせてさまざまな分野で活躍できることに強みがあり、今後益々その働き方は注目されていくだろう。
新卒から開発・設計業務に携われる
「私は新卒で技術者派遣の道を選びました。以来、十数年になりますが、ますますそのメリットを感じるようになっています」と話すのは、齋藤大輔さん。
齋藤さんは大学卒業後、2001年4月に新卒で大手の技術者派遣会社に入社。現在は、大手試作品メーカーで機械設計を行っている。
「派遣」には、大きく分けて「有期雇用型」と「無期雇用型」の二種類がある。派遣先での仕事が終わると雇用契約も満了するのは「有期雇用型」。リーマンショックの時に問題となった「派遣切り」は、この有期雇用型の派遣だ。一方で、派遣会社の正社員として雇用されるため、派遣先での仕事の有無にかかわらずシニアまで長く活躍できるのが「無期雇用型」だ。齋藤さんが勤務する会社は「無期雇用型」であり、技術者が正社員として採用されている。このため、安心して日々の業務に集中することができる。
では、齋藤さんが語る無期雇用型の派遣で働くメリットとはどのようなものなのか。「まず、早くから自分が興味のある分野、しかも製品の開発や設計などに携われること」だと言う。一般的に、製品の開発や設計等の仕事に就くにはメーカーなどに就職することが多いが、入社早々から開発・設計ができる部署に配属されることはまれだ。
「技術者派遣であれば、若い社員であっても、ものづくりの上流工程に携わることができます。もちろん、高度な開発・設計をするためには自分自身のスキルを向上させる必要がありますが、目標とする技術や製品、特定顧客向けに特化した研修も数多く用意されているので、スキルアップのチャンスもたくさんあります」(齋藤さん)
明確に開発したい製品が決まっている場合はもちろん、ものづくりに携わりたいが何を開発したいか定まらない場合でも、開発設計に携わりながら様々な企業を経験できる。
齋藤さんが携わるのは、スマートフォンやモバイル端末、家電、自動車まで、様々なショーや展覧会向けに唯一無二の製品を試作なしで作り上げる「高度なものづくり」だ。
「3D-CAD(3次元設計システム)で設計をし、CAE(解析・シミュレーター)で解析をして強度を検討しながら、製品を作っていきます。自分が携わった製品がお披露目されたり、実際に商品が販売されているところを目にしたりするとやっぱりうれしいですよね」と笑顔で語る。
齋藤さんが考えるもう一つのメリットはこの点にある。つまり、充実感を得ながら、好きな業界、好きな分野など、やりたい仕事にチャレンジできることだ。
「現在は自動車関連の設計をしていますが、その前のお客様では家電の設計に携わっていました。私は色々な分野に挑戦したいタイプなので、正社員という安定した立場で様々な企業の開発・設計が可能な今の働き方が合っていると思います。お客様や製品が変わるたびに勉強しなければならないことは増えますが、新しい発見も多く、むしろ楽しみです。これまで複数メーカーへの派遣のほか、社内の受託設計開発(請負)で複数案件の開発・設計業務にあたりました。全てが現在の仕事に活きています。さらに経験を積み、将来はCO2の排出削減など、地球環境問題の解決につながるような製品づくりに携わりたいです」
日々の業務で経験を積みながら、自分の可能性を広げることができるわけだ。齋藤さんの願いも、いずれかなうに違いない。
時流に合わせて最新技術を活かした製品を開発
ものづくりメーカーから、あえて技術者派遣に転じ、活躍している人もいる。武井隆司さんもその一人だ。学生時代の専攻は電気工学で、大学卒業後、1999年に総合電機系の部品メーカーに入社した。
「前職では光ピックアップと呼ぶ、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスク)、ブルーレイ・ディスクレコーダーなどの記録データをレーザー光で読み取る際に使う部品の開発に携わっていました。ものすごく好調な時期もありましたが、その後社会全体の需要が減少し、競合他社の撤退などもあり、この製品の将来に不安を感じるようになりました」と武井さんは振り返る。
時代のニーズに合わせた製品に特化するのが大手メーカーのセオリーだが、激しい市場環境の変化に柔軟に対応するのは容易ではない。
「一方で、市場の中には必ず好調な分野、好調な企業があります。技術者派遣の働き方は、いつでも、その時々に元気で忙しいお客様を支援するものであり、社会全体の潤滑油のような働き方です。開発する製品が変わることにも魅力を感じています。新しい製品、新しい技術に触れられるのは、とても楽しいです。また、正社員なので雇用が安定しており、シニアまで長く働ける点も大きな魅力です。このような考えで無期雇用型の派遣という働き方を選びました」
武井さんが現在勤務する技術者派遣会社に転職したのは2016年だが、早くも責任ある仕事に就いている。
「ある外資系メーカーで液晶ディスプレーの開発に携わり、お客様の社外の人材でありながら、リーダーを任されています。海外の回路設計、メカ設計などのスタッフとコンタクトしながら、スケジュール管理などを行い一つの製品を作り上げていきます」
武井さんのように、経験とスキルを身に付ければ開発現場のマネジメントを任されることもある。また、管理部門に移り、バックオフィスで技術者のサポートをすることも可能だ。もちろん、エンジニアでい続けたいと望む人は、キャリアを積み重ね、定年再雇用後もエンジニアとして活躍することができる。技術者派遣は、個人に合わせた柔軟な働き方を可能にし、個人の可能性を広げる働き方とも言える。
「いま、海外とのブリッジ役をこなしつつマネジメントにも挑戦しています。新しい仕事をするときにはやっぱり不安もあります。ただ、派遣先の先輩や、社内の仲間、営業担当に気軽に相談できる体制もあるし、この2年を振り返ると、相談の回数はだいぶ減っています。日々、仕事を通じて成長できている実感があります」(武井さん)
時代に合わせて活躍の場を広げられる
ビジネスパーソンが長きにわたり付加価値を生み出し続けるためには、「就社」ではなく「就職」が大切とされるが、人生100年時代には個人の経験やスキルはますます重要になってくる。そこで技術者派遣は重要な選択肢の一つになりそうだ。
前述にあるエンジニア2名が紹介する働き方を体現する会社とは、株式会社アルプス技研である。アルプス技研は横浜に本社を置く、機械・電気電子・ソフトウエア・化学など幅広い分野のエンジニア約3,500名を擁する東証1部上場の技術者派遣大手だ。設計事務所として1968年に創業され、今年7月に50周年を迎える。
同社の今村篤社長は「当社のエンジニアは正社員のため、雇用が安定しています。その上でエンジニアの成長を支援する様々な体制を整えています。創業以来、人を育てながら技術力・人間力を向上させる点にこだわりを持ち、お客様に信頼頂けるエンジニアを育成してきました。技術者本人が目指すキャリアプランの実現を全力でサポートし、エンジニアとして大きなやりがいを感じられる環境があります」と語る。
だからこそ、新卒で入社した技術者から、キャリア採用、第二新卒採用、さらには定年後再雇用のシニアまで、それぞれのスキルや経験、キャリア志向などに柔軟に応えられる。まさにアルプス技研での就業スタイルは、“働き方改革”を体現していると言える。
AI、IoT、EV(電気自動車)などの最先端分野の取り組みも積極的だ。「今後はグローバル展開を加速させるほか、農業(アグリテック)や介護など新たな分野にも進出し、積極的に外国人材も活用したい」(今村社長)とさらに先を見据える。
時代の変化に合わせ、時代に必要とされる領域に活躍の舞台を広げていけるのも、「無期雇用型技術者派遣」の働き方の大きな魅力だ。