
現在、世界各国でガソリン・ディーゼル車から電気自動車(EV)へと移行する「EVシフト」が加速しているが、日本はといえば、政府もユーザーも「様子見」という印象だ。経済産業省の調査によれば、EVおよびPHV(プラグインハイブリッド)の登録台数は乗用車全体の1%にも届いていない(2016年10月末)。背景には、何があるのだろうか。
充電インフラは本当に足りないのか?
消費者の「EV買い控え」を生んでいる理由のひとつが、充電インフラへの不安だ。一般社団法人次世代自動車振興センターのアンケートによれば、EV・PHV非保有世帯の実に92.5%が「充電インフラが十分でない」をEVを買わない理由に挙げている。
では、その92.5%の人が持つ印象は、日本の充電インフラの実態に即しているのだろうか。高速道路やコンビニエンスストアに設置されている充電器を運用管理するジャパンチャージネットワークの藤本洋登社長は次のように説明する。
藤本洋登社長
「緊急時に充電できるようにするため、業界全体で70キロごとの充電器設置を目標としてきました。現時点(2018年3月)で未設置なのは数カ所のみです。充電インフラ整備の第一段階をクリアするうえで、”最終局面”を迎えたと考えています」
現在未設置なのは北海道および東北地方の一部のみで、すでにここでも計画が進行中だという。つまり、日本全国どこに行っても70キロ以内にEV充電スポットがある状態まで秒読み段階というわけだ。
経済産業省によれば、急速充電器は2017年1月現在で7204基。普通充電器も合わせると2万8000基以上がある。全国のガソリンスタンドの数が2017年3月末現在で3万1467カ所であることを踏まえると、充電インフラは整いつつあると言える。
EV利用者の間では、すでにこの整備状況は認知されたためか、利用率もこの1年で大幅に上昇している。
「2017年12月の高速道路の充電器利用回数は、前年同月比で33%増加しており、この数字はEVの増加率よりも大きいのです。つまり、充電スポットが増えていることが従来のユーザーに認知され、EV利用者の行動範囲が広がっていることの現れと考えています」(藤本社長)
藤本社長によれば、高速道路のみならず、コンビニエンスストアにある充電スポットの利用回数も飛躍的に伸びている。2017年12月は前年同月比45%アップ、合わせると41%アップという数字になる。
「利用データを解析すると、同じ人が同じスポットを利用する傾向があります。決まったシチュエーションでコンビニエンスストアに立ち寄り、充電の間にコーヒーを楽しむといった習慣が生まれつつあるのかもしれません」(藤本社長)
集客効果を期待する事業者も増加中
こうしたEV充電スポットを取り巻く状況の変化は、ビジネスのフィールドでも敏感に察知され始めている。集客装置としての価値を認め、設置を検討する事業者が増えているのだ。
「以前は、政府の補助金が出ている時期にしか問い合わせは来ませんでした。しかし今年度は、補助金の申請受付が終了してからも問い合わせが増えています。『日産リーフ』がフルモデルチェンジしたこともきっかけとなっているようです」(藤本社長)
今後は、EVの充電客の争奪戦も起きるかもしれない。大手スーパーでは、店舗で付与されるポイントで充電器が利用できるシステムも導入しており、他の充電スポットとの差別化を進めている。同様の動きがさらに広がっていく可能性は高い。
充電渋滞を起こさないための「選択と集中」
一方で、ユーザー目線で考えると、EVの増加は「充電渋滞」のリスク増にもつながる。ジャパンチャージネットワークでは、そうした事態を防ぐため設備の増強に取り組んでいる。
「充電スポットの『空白地帯』を埋めるという普及の第一段階はクリアしつつあり、現在は『選択と集中』の時期に入っています。利用頻度の高いところは増設し、すでに3基まで増やしたところもあります」
ちなみに同社では、高速道路の充電スポットに特化したナビゲーションアプリもリリース。充電スポットの使用状況をリアルタイムで把握できるほか、ルート検索と連動させることで、走行中の充電計画を立てられる機能も搭載。音声ガイド付きで運転中も利用可能となっている。
EVのパイオニアである新型「日産リーフ」は昨年10月に販売を開始して以来、わずか2カ月で1万2000台を受注。魅力ある車種が登場すれば、消費者のニーズを刺激することを証明した。さらに車種が増え、充電インフラに対する認知が進むことで、EVシフトが加速する可能性はありそうだ。