
2017年9月、FWD富士生命保険(以下、FWD富士生命)は、それまでの社名を変更して誕生した。同年4月に、香港などに拠点を持つ保険会社のFWDグループ傘下に加わったことを受けてのものだった。同グループの強みは、豊富な資本力もさることながら、デジタルテクノロジーの積極的な活用とシンプルでわかりやすい商品の提供にある。FWD富士生命は、デジタルの力で日本の保険業界に変革を起こそうとしている。
アジア全域を代表する保険グループを目指す
「これまで多くの外資系の生命保険会社が日本に進出してきましたが、そのすべてが欧米の生命保険会社でした。そこに初めて、アジア発の保険会社であり、アジア全域を代表する保険グループを目指すFWDが日本に進出したことは大きなエポックになると考えています。当社は、アジアに根を下ろした保険グループの一員として、これまでにないカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の創出に注力しています」
こう語るのは、FWD富士生命の友野紀夫社長。


FWDグループは、「金融サービス」、「通信・メディア・テクノロジー」、「不動産開発」の3つの基幹事業をアジアで展開する香港のパシフィック・センチュリー・グループ(PCG)の保険事業部門として2013年に設立された。設立以来わずか数年で、香港・マカオ、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、日本で保険事業を拡大。現在はさらに他の市場への参入も検討しているという。
若い企業でありながら急成長している理由を友野社長は次のように説明する。
「大きな特長としてデジタルテクノロジーを積極的に活用している点が挙げられます。お客さまのご要望などをビッグデータとして蓄積するとともに、これらのデータに基づきわかりやすくシンプルな商品開発を行っています。モバイルツールやアプリケーションを積極的に活用したインシュアテックをいち早く導入し、ユーザーフレンドリーなサービスとシンプルでわかりやすい商品を提供することにより、若い頃からネットやITに慣れ親しむデジタルネイティブ世代を中心とした層からの支持を得て、ビジネスを拡大しています」
国によって、ビジネス慣習や規制の違いもあるため、国境を越えて同じサービスをそのまま提供するのは難しくても、これらのノウハウは日本におけるデジタルトランスフォーメーションにおいても足掛かりになる。
安定した財務基盤で経営にスピードを
代表取締役社長兼CEO
友野紀夫
「経験から言えることですが、会社の財務基盤とお客さまや保険代理店の皆さまへの新しい提案、もしくは大胆で革新的なビジネス展開へ挑戦することへのスピード感はとても密接に関係しています。その点で今回、強固な財務基盤を有するFWDグループに加わったことは大きな強みとなります。お客さまのニーズに応える商品の開発、提供やサービスの改善や質の向上へ、スピード感を持って取り組むことができるようになります」
そこで思い当たるのは、前述したようなFWDグループのデジタルにおける先進的な取り組みだ。日本でもインターネットを生かした販売スタイルに大きくシフトするのだろうか。
「それは違います。金融庁も指摘しているように、日本ではお客さまが複数の保険を比較検討したうえで、自分の判断で保険に入るというスタイルが主流になりつつあります。保険ショップなどを含む保険代理店を利用されるお客さまは今後さらに増えると予想しています。お客さまとのタッチポイント(接点)になるという観点で、当社にとっては保険代理店における対面販売がメインのセールスチャネルであることに変わりはありません」
FWD富士生命は、今後日本の市場に合った形でデジタルテクノロジーを導入し、顧客の利便性や体験を向上させるソリューションを開発していく予定だ。
「人生を思いっきり楽しんでほしい」
日本では少子高齢化や人口減少に伴い、保険市場が今後大きく成長することは難しいといわれている。それに対して友野社長は、「確かに市場規模は急拡大しないかもしれません。ただし、保険に対するお客さまのニーズがありながらまだそれに応えることができていない例も数多くあります。その点では成長の余地はまだまだあるものと考えています」と答える。
たとえば、同社が2010年に発売したがん保険だ。従来のがん保険は、入院日数に対して給付金が支払われるものが一般的だったが、同商品は初めてがんと診断されたら、治療内容にかかわらずまとまった金額を受け取れる一時金タイプの保障を主契約とした。シンプルでわかりやすい設計が好評でヒット商品となった。同社では、現在でも後継商品として一時金給付タイプのがん保険を取り扱っており、好評を博している。
また、経営者・役員の死亡・高度障害状態だけでなく、働くことが困難になりうる要介護状態や特定の疾病などに備える生活障害型定期保険の開発にも取り組み、経営者保険のマーケットシェアを拡大した。
同社ではこのほか、知的障害を持つ子どもの親らを対象にした生命保険信託をみずほ信託銀行、代理店のジェイアイシーとともに開発している。信託できる保険金を従来の生命保険信託に比べ引き下げているのも特長だ。
「これらの商品同様に、2018年以降、特色ある商品を年間4商品開発する予定です。それにより2021年には、新契約年換算保険料(ANP)490億円を目指しています。お客さまや保険代理店の皆さまに寄り添い、日本の保険業界に新風を巻き起こす存在になりたいと考えています」
FWD富士生命のスローガンは「いくぜ、人生。」。これには「お客さまの心配事は当社が引き受けるので、お客さまには”今の人生を思いっきり楽しんでほしい”という思いが込められていて、FWDがグループ全体で打ち出している他社とは異なる各種ビジュアルイメージにもこの考え方が色濃く反映されています」(友野社長)という。
同社はFWDの他社とは異なる顧客視点やテクノロジーの活用を通じて、商品やサービスを進化させカスタマー・エクスペリエンスを向上することで、ビジネスをさらに加速させようとしている。