「最高学歴」学生が描く新・将来設計に迫る 偏狭な理想論じゃダメ、現実をどう動かす?

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理想論や一時的な策でしのぐのではなく、全体を俯瞰して課題の解決にまでたどり着く。そうした実行力を持ったリーダーには何が必要か? 学生たちは超域イノベーションを通して、その一端を体得したようだ。

篠塚 友香子 さん
(人間科学研究科 博士後期課程3年)

また篠塚さんは、「分野の異なる者が協働する難しさ」にも直面したと語る。「情報の交通整理をする方法は、専門分野によって異なります。私は文章ですが、ほかのメンバーは図や表だったりする。物事を捉えるスケールや視点も全然違うので、最初は議論がかみ合わず戸惑いました。通じあっている気になっているだけではないかと、違和感もありました」と振り返る。

メンバー同士で激しい議論の応酬になることも少なくなかったというが、そうした経験が分野を超える確かな力になったことは間違いない。高田さんもまた、既存の枠や領域を隔てる壁を軽々と超える柔軟さを手に入れた実感を語る。

「『超域イノベーション実践』では、アメリカのカリフォルニア大学アーバイン校に3ヶ月間特別研究員として留学し、同地の水不足問題に取り組みました。以前ならまず過去の文献やデータから現状を把握しようとしたでしょうが、その際は関係者にアポイントを取ってヒアリングしたり、現地を調査したりすることから始めました。フットワークを軽くし、躊躇なく多様な人と関わりながら問題の本質を探せるようになったのは、超域イノベーションで学んできた成果ですね」

藤田教授は彼らの成長に目を細めつつ、こう強調することも忘れなかった。「経験を通じて学ぶことだけが重要ではありません。全体のシステムやデザイン思考を習得したり、コミュニケーションについて考えたりする大学院での学びがあるからこそ、実践が生きる。この両方が不可欠です」

イノベーションを起こすトップリーダーの成長に期待

超域イノベーションでの学びを経て、高田さん、篠塚さんは進路を大きく方向転換することになった。

大学入学時には研究者を志望していたという高田さんは、「基礎的な研究だけでなく、実社会にインパクトを与えることにも携わりたいと思うようになりました」と企業への就職を決めた。精神科の現場に関わる専門職を志していた篠塚さんも、京北地域での経験を経て「外部パートナーという立場から関係者に働きかけることで、具体的な課題を解決に導く。そんな役割に魅力を感じ、進路を決めました」と、企業で力を発揮する道を選んだ。

「未来にイノベーションを起こせるのは、これまでにない考え方やシステムをもって、新しいビジョンを提示できる人」だと改めて繰り返した藤田教授。「修了生の中から将来、それを実現する人が出てくると信じたい」と述べる。超域イノベーションが生み出す「真の成果」を、期待を込めて待っている。