「最高学歴」学生が描く新・将来設計に迫る 偏狭な理想論じゃダメ、現実をどう動かす?
産官学民でリーダーになる博士人材を養成する
「超域イノベーション博士課程プログラム」(以下、超域イノベーション)は2018年3月、新たに第2期生の卒業を迎えた。その成果の第一歩が、確実に社会に刻まれようとしている。
超域イノベーションは、専門分野を統合し、広い分野に応用できる「汎用力」や「俯瞰力」、「独創力」を備え、グローバル社会を牽引するトップリーダーとなるべき人材の養成を目標に据えた博士課程前期・後期の5年間一貫の学位プログラムだ。2011年、文部科学省による「博士課程教育リーディングプログラム」に採択され、その支援のもと12年以降教育を展開してきた。同事業の中でも特に、文理の枠組みを超えた新しいタイプの博士人材の養成を目指す「オールラウンド型」に位置づけられている。
これまで日本の博士課程教育は、限定された学術領域で高い専門知識を有する研究者の育成に主眼が置かれてきた。文部科学省の同事業は、そうした従来型の大学院教育を抜本的に改革し、産官学民の広いフィールドでグローバルリーダーとなる人材の育成を後押しするべくスタートした。その背景を「超域イノベーション」のプログラムコーディネーターを務める藤田喜久雄教授(工学研究科)はこう読み解く。
「多くの人が日本は高学歴社会だと考えていますが、実は決してそんなことはありません。大学院進学率という点では、先進諸国に大きく水をあけられているのが現状です。環境やエネルギー、資源などの問題に代表されるように、もはや特定の専門だけでは解くことのできない複雑かつ高度な課題が山積する今、世界では高度な専門知識を持った博士人材が産業界でもリーダーシップを発揮しています。日本にはそうした世界基準で渡り合える博士人材が圧倒的に不足していることを、もっと深刻に受け止める必要があります」
こうした強い問題意識のもと、「超域イノベーション」では、専門分野の枠を超えて優秀な学生を選抜。産業界からも教員を迎え、既存の博士課程にはない画期的な教育を開発、実践してきた。担当教員の一人である檜垣立哉教授(人間科学研究科)は、超域イノベーションがとりわけ文系の博士人材の産業界での活躍を後押しするものになることに期待を寄せる。
「これまでは、博士後期課程に進学する文系学生のほとんどが、卒業後も大学に残って研究を続けることを志望していました。しかし膨大な文献を読み、総合的な視点で問題点を見出し、新たな知見を得て博士論文を書くには、限られた分野を探究するばかりでなく、高度な汎用力や俯瞰力が欠かせません。そうした力は十分社会でも生かせるはずです」と語る。
文・理融合の教育で体得する「境域」を超える学びとは
それでは、真のイノベーションを導き出しさまざまな社会課題を解決し得るトップリーダーには、いったいどんな力が求められるのだろうか。超域イノベーションでは、その問いに応える独自の教育プログラムを開発し、この6年間を通じて磨き上げてきた。