革新を起こす「攻め」と「守り」のITとは? AIによるサポートやコスト約50%削減も実現
「攻め」と「守り」のIT戦略
「Singularity(技術的特異点)」という言葉をよく耳にするようになったが、AIに代表されるテクノロジーの進化により、人が想定できる範囲を超えた変化がもたらされる可能性がある。そして現在が人類の経験した文明の中での大きな変化点であることを示唆するものである。2020年頃には、わずか10万円ほどのコンピュータが1秒間に行う演算能力は人間の脳の処理能力を超え、2045年には、脳の100億倍のコンピュータ能力が登場すると言われている。
こうした時代に企業のCEOの関心事も、今後3~5年で自社に大きな影響を及ぼす外部要因として「テクノロジー」を挙げている。(*1)日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業 次世代EA 理事 内田真治氏は「中でも重要視されるのがクラウド、モバイル、IoTといったテクノロジーであり、さらにこうした個々のテクノロジーはAIと統合していくことになる」と指摘。当然、大量のデータを保持するデジタルプラットフォームの整備は不可欠だ。ただし、ここにはコストの課題もある。そこで、内田理事は「テクノロジー活用には今後”攻め”と”守り”の戦略が必要になる」という。ビジネス拡大を担う「攻めのIT=AI、ブロックチェーン、IoT などの先進テクノロジーとそれを支えるデジタルコア (Next Gen. ERP)」への投資と、一方では徹底したコスト削減を行う「守りのIT=業務系 SaaS ソリューション + BPO」をバランスよく行うことが不可欠だと語る。
*1:「グローバル経営層スタディからの洞察」(最新の調査は、世界 112カ国における 6つの CxO (最高責任者) レベルの経営層 12,854 名の回答に基づく)
AI活用もSoR(System of Record)との連携がとれてこそ
攻めのITを代表するAI活用では、現在どのような事例が世の中に出てきているのだろうか。
日本アイ・ビー・エムの刀根 猛氏は、「労働人口の減少が課題となる日本では、人手不足をカバーするためのAI活用が進んでいる」とし、ただ、その中で人の仕事をAIが奪うといった懸念よりも、人のビジネス活動や創造のサポートを支援できるAIのメリットを強調した。実際にAIを導入した例として、アパレルメーカーであらゆる角度からのデザイン提案をAIが行う様子や、日本で一番AIが活用されているというコールセンターでの音声認識技術と自然言語によるサポート例、工場でのライン管理でもエラー対応における迅速な情報提供を示す例などを挙げた。ECサイトでの販売支援の活用では、例えば複数のコーヒー豆をユーザーがオーダーした際のAIの対応も紹介している。単純な注文受付の受け答えだけでなく、在庫状況が足りない場合には、別日の発送を提案したり、他の商品とのクロスセル案内をする高度なやりとりが行われていた。