東京2020大会に向けてユニバーサルフェスタを開催
東京ガスは2017年10月28日・29日、江東区豊洲の「がすてなーに ガスの科学館」と「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」で「豊洲ユニバーサルフェスタ―みんなのチャレンジ!」を開催した。
同社東京2020オリンピック・パラリンピック推進室長の狩野友里氏はその狙いを次のように語る。「東京2020大会のオフィシャルパートナーとして、1000日前というタイミングに合わせて開いたものです。もともと当社は障がい者スポーツの支援にも力を入れてきましたが、今回は障がい者スポーツの体験に加えて、『全ての人々がお互いを尊重し、支え合い、生き生きと安心して快適に暮らせる社会や街』という私たちが考える共生社会を知っていただく機会にしたいと考えました」。メイン会場である「がすてなーに ガスの科学館」は、東京ガスが86年に豊洲に開設した企業館であり、地域社会との交流や情報発信の場として、さまざまな活動を展開している。
豊洲Brilliaランニングスタジアム館長
為末大
本イベントでは同社だけでなく、ユニバーサル社会に向けてさまざまな取り組みを行っている企業や人材の協力も得たという。シドニー、アテネ、北京のオリンピック3大会に出場し、現在はスポーツを通じた社会貢献に尽力している為末大氏もその一人だ。
「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」は、東京ガスが他社と共同で16年12月に開設した。館長は為末氏が務める。全天候型60メートル陸上トラックには、競技用義足開発のためのデータ解析や工作作業を行うラボも併設される。一方で、ランニングステーションとして地域のランナーにも解放している。
為末氏は、「子供たちのかけっこスクールが行われている横で、義足のパラアスリートが練習しています。子供たちは、最初はびっくりして見ていますが、すぐに慣れて義足にも触れています。こういう風景が当たり前になることが大切だと思います。特に豊洲はまだ開発途上で、東京では珍しく白いキャンバスが残っているような場所です。このランニングスタジアムを中心に、スポーツやアートで人と人がつながる街になるといいですね」と話す。
相互に影響し支え合うことが「共生」
「豊洲ユニバーサルフェスタ―みんなのチャレンジ!」では、小学生が記者役になり、オリンピアン・パラリンピアンに取材し原稿作成も行う「子ども記者体験」も行われた。
東京2020組織委員会のアスリート委員である5名が参加したが、その内の一人が河合純一氏だ。河合氏はバルセロナ1992大会からロンドン2012大会まで6大会連続でパラリンピック水泳に出場し、5個の金メダルを含む21個のメダルを獲得。16年には日本人として初めてパラリンピック殿堂入りとなった。
アスリート委員会副委員長/独立行政法人日本スポーツ振興センター 主任専門職
河合純一
現在、アスリート委員会副委員長として、アスリートの体験を生かして意見を発信したり提言を行ったりしているほか、障がい者スポーツへの理解を深める活動にも力を入れている河合氏は、イベント参加について次のように振り返る。「東京ガスとアスリート委員会で作った『子ども記者体験』でパラリンピアンに取材した子供たちは、障がい者スポーツが特殊なものではなく、『もっと速くなりたい、強くなりたい』という延長上にあるという点で、ほかのスポーツと同じであることがわかったと思います。子供たちがこうした体験を通じて感じたことを友だちや家族に話したりすることで、『共生社会』の本質的な部分が広まっていくと思います。こういったことが東京2020大会の大切なレガシーになると考えています。20年をきっかけに、『共生社会』を実現する取り組みを続けていくことが大切です」と語る。
為末氏は「一方が支える側で、もう一方が支えられる側という考え方も改める必要があるでしょう。かつては、オリンピックで得たノウハウをパラリンピック選手も取り入れるという流れがありました。しかし、最近では『障がいが走りにどのような影響を与えるのか』といった研究から新たな発見も生まれています。オリンピック競技とパラリンピック競技が相互にプラスになっているのが、まさに共生のひとつの形であるといえます」と語る。
企業の支援はビジョンの一致が重要
オリンピック・パラリンピックの成功を支援する大会パートナーはもとより、共生社会を支える存在として欠かせないのが企業である。さまざまな企業で多様な活動が行なわれている。
為末氏は「企業からスポンサーとしてお金をいただくだけでは、一過性のものになりがちです。そうではなく、企業の皆さんが日々の活動の中で目指されていることを、スポーツと一緒に、同じビジョンを持ってやっていくことが大切だと思います。『同じビジョンを持つ』上で、共生社会がこれからの重要なキーワードとなるかもしれません」と話す。
河合氏はさらに、障がい者視点の活用のメリットやマーケットの可能性について指摘する。「企業の商品やサービス開発の原点は、『不便や不自由の解決』です。日本の人口の6・7%にあたる障がい者たちは、つねに不便や不自由と対峙しており、そうした人々の視点によりイノベーションも起こせるかもしれません。これもまた、相互に生かし合う『共生社会』のひとつの形だと思います」。
東京2020オリンピック・パラリンピック推進室 室長
狩野友里
最近では、スポーツを通じた社会貢献活動に力を入れる企業も増えつつある。狩野氏は「大切なのは事業活動にどうつなげていくかという点だと思います。当社も地域の皆様に信頼され選ばれる企業になるために、『共生社会実現』と『地域社会の発展』を両立させる取り組みを進めていきます。ただし企業が1社でできることには限りがあり、複数の企業が連携して初めて実現することもあります『共生社会の実現』という目標に向かってであれば、さまざまな企業、行政、団体などが一体となって取り組めるのではないでしょうか。20年およびさらにその先に向けて、そのような連携が増えることを期待しています。当社もぜひ地域社会に貢献する『暮らしや街づくり』といった部分で皆様と力を合わせていきたいと考えています」と結んだ。