羽田空港の機能強化はなぜ必要なのか 国際線の増便が日本経済に与えるインパクト
安全や騒音については技術で克服できることも多い
ただ、時間帯を限定するとはいえ、都心の上空を飛行経路に使用するとなれば、安全と騒音についての問題をどう解決するかということが極めて重要になる。
安全については落下物対策が急務になる。そのため国交省は現在、落下物を未然に防止するために航空会社が遵守すべき落下物防止対策基準の策定を検討しており、これは世界的に類を見ない取り組みだ。それ以外にも、海外も含めた航空会社に対し、適切な整備・点検を徹底するよう繰り返し指導したり、空港管理者による新たなチェック体制を構築するなどの取り組みを進めている。また、万が一落下物が発生したときの対応として、落下物の原因者がある程度特定された場合に、関係ある航空会社が連帯して補償する「救済制度」の加入促進や見舞金制度の創設なども検討されている。
一方、騒音対策については、低騒音機の導入を促すため、騒音のレベルに応じた着陸料金体系を導入するとともに、当初の計画より飛行高度を引き上げることや、防音工事の助成制度の拡充などが検討されているところだ。
国交省は、羽田空港の機能強化計画や安全対策、騒音対策などについての住民説明会を15年から行っており、昨年11月から今年2月にかけては、4巡目となる説明会が首都圏各地で開催された。同省は引き続き丁寧な説明を続けるとしている。
「国際線の増便は世界の潮流であり、日本にとっても必要不可欠な施策だと考えています。羽田空港は国内線と国際線の乗り継ぎハブ、成田空港は国際線から国際線への乗り継ぎハブという性格を持っています。首都圏に性格の異なる国際空港を二つ持っていることは、日本の大きな強みでもあります。安全や騒音については、技術の進化やさらなる対策によって克服できることも多いので、ぜひこの強みを生かしていってほしいですね」(伊藤氏)
これから20年に向けて、訪日外国人旅行者数はさらに増え続けるのが確実な情勢。羽田空港の機能強化について知ることで、日本の発展のために今、何が必要かを考える機会にしてみてはどうだろうか。