働き方改革に「失敗」するマネジャーの特徴 「働きやすさ」だけではやりがいは生まれない

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「『働き方改革』でマネジメントが難しくなった」という話は多いが、それは「働き方改革のせい」ではなく、そもそものマネジメントの巧拙の話かもしれない。

「『テレワークだとスタッフをマネジメントできない』と主張するマネジャーは多くいますが、テレワークか対面かだけではなく、そもそもマネジメントそのものに課題があることが多いと考えています」と語るのは、リクルートキャリアの荒金泰史氏。能力の高いマネジャーは、ICTを活用してスタッフがテレワークでも在宅勤務でも成果を出す、ということの裏返しでもある。

荒金氏が語る、現代のマネジメントにとって究極の状態とは「メンバーが自社の仕事に自らやりがいを感じ、自ら創意工夫を重ねてくれること」。その実現のためには一人ひとりの「心理」をいかに的確にとらえ、その状態に向けていくかが重要であり、カギを握るのは、管理職のマネジメントスキルだという。

従業員が働きやすい「だけ」では足りない

「働く人の価値観が変化し、一つの会社でずっと働き続けることが当たり前でなくなっている現代では、一人ひとりの動機や自発性と、企業の実現したいこと、向かいたい方向性にいかに接点を見いだせるかが重要です。個人の意識変革は、企業の意識変革よりもずっと早い。”働き方改革”や”人生100年時代”といったキーワードがこれだけ普及している世の中にあって、『自分の人生にとってより重要と思える仕事をしたい』と思う個人の意識に応えられないと、企業が従業員をつなぎ止めることはどんどん難しくなります」(荒金氏、以下同)

たとえば、従業員の早期離職に悩んでいる企業でも、以前は仕事や環境の厳しさが退職時の理由として多く挙がっていたが、昨今はそういったわかりやすい不満による退職は減っているという。「ここで頑張る理由がない」ことが退職の動機になる時代なのだ。

HRアセスメントソリューション統括部
ソリューション推進部
ソリューション開発グループ
マネジャー
主任研究員
荒金 泰史

「働き方改革」については、実際に何らかの取り組みを始めている企業も多いが、そもそも目指す着地点がズレていることが多いと荒金氏は指摘する。

「一口で言えば、日本企業の働き方改革は、『従業員の働きやすさ』への配慮をゴールとしてしまっています。『従業員にとって優しい、働きやすい会社である』ことはもちろん大切ですが、仕事や会社へのエンゲージメント(work engagement:仕事に対し熱意を持ち、没頭し、活力を持っていること)を高めることに対する視点が抜けているのです。

些細な違いに聞こえるかもしれませんが、実行フェーズにおいて、たとえば『働きやすさ』を指標化し、全社アンケート等で毎年モニタリングしているうちに、それだけが最終目的となってしまう企業や人事が実際にはとても多い。しかし、こういった活動を積み重ねたところで、従業員にとって都合の良い会社にはなれても、従業員が『ここで頑張りたい』と思える会社にはなれません」

つまり、大切なのは、自社の仕事にやりがいを持ち、自ら創意工夫を重ねる従業員を増やしていくことにある。そうしてはじめて職場の生産性は向上し、働き方改革が真に意味をなすことになる。

「また、非常に重要なことは、現場のマネジャーにとって、組織成果を上げるにあたり、従業員がやりがいを持って自ら創意工夫を重ねてくれることほど、ありがたいことはないということです。言い換えれば、現代のマネジャーにとっては、いかにこの状態をつくれるかが最もクリティカルな課題であり、日々の悩みの中心であるということです」

ではどうすれば、従業員にやりがいを持って働いてもらうことができるのか? 

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