ダイキン、新エアコンの本気度がすごい トースター、炊飯器に続く指名買いはコレだ
ガラパゴス化していた日本のエアコン市場
「とにかく小さくて薄い室内機をつくろう」。2015年6月、ダイキン工業空調営業本部の本部長に就任すると、舩田聡氏はそう檄を飛ばした。
ダイキン工業は世界的な空調専業メーカーで、業務用エアコンでは圧倒的なシェアを持っている。家庭用でも1999年に発売した「うるるとさらら」、そして2012年に発売した「うるさら7」が牽引し、シェアを確実に伸ばしてきた。だが、舩田氏には、忸怩(じくじ)たる思いがあった。エアコンの室内機が大型化する一方だったのだ。これには理由がある。日本では、省エネをはじめとする機能競争が激しく、室内機を大型化せざるを得ない事情があったのである。舩田氏は、その室内機の大きさに違和感を持っていた。
「室内機の厚みがどんどん増していき、設置した壁から大きくせり出すようになると、圧迫感を与えますし、室内の雰囲気ともマッチしません。エアコンは本来、小さくて薄いもののほうがいいはずなのに、省エネ性能と機能強化を実現するために厚みを増してしまったのです」
その結果、日本のエアコンは省エネをはじめとする機能において、世界で最も優れたエアコンになった。それに加えてダイキン工業は、冬場に給水なしで加湿できる機能もエアコンに付加するなど、技術的にも世界の先端を走っている。だが、海外、特に欧州では機能性とともにデザイン性が重視される傾向が強く、日本だけ室内機がどんどん大型化する特異な状況。まさに、日本のエアコン市場はいわばガラパゴス化していたのである。
細部にまで徹底したデザインへのこだわり
実は2016年に、同社はダイキンヨーロッパが欧州で開発したデザインエアコン「UXシリーズ」を日本に逆輸入している。風の流れをイメージさせるウェーブデザインが特徴的なこの製品は、日本の消費者にも好意的に受け止められた。この経験も踏まえ、舩田氏らは「日本でもデザインを重視してエアコンを選ぶニーズがある」という仮説を立て、デザイン性を重視した薄型の室内機開発をスタートさせたのだった。それは同社にとってある意味、戦略の転換だった。実際、舩田氏自身「賭けに近いところがあった」と述懐する。
だが、機能性を高めながら室内機を薄くするというのは二律背反的なテーマであり、開発は困難を極めた。