楽天トラベルの歴史はOTA躍進の歴史と重なる
楽天トラベルの歴史は、OTA(オンライン旅行会社)躍進の歴史でもある。前身となる「ホテルの窓口」は1996年に営業を開始。その後、個人旅行者数の増加やインターネット予約の普及の波に乗り、事業を順調に拡大してきた。20年前、現在のようなインバウンド旅行者、個人旅行者の増加や民泊といったシェアリングエコノミーの台頭を予測していた関係者はどれほどいただろうか。ICTの進化も例外ではない。個人が入手できる宿泊施設や観光地などの情報量は格段に増え、スマートフォンさえあれば世界中の宿泊施設やアクティビティを簡単に予約できるようにもなった。そして、グローバル化。世界の観光客数も着実に伸びており、観光立国というスローガンを持ち出すまでもなく宿泊施設をはじめとする観光業が日本の成長に寄与すると期待されている。
ライフ&レジャーカンパニー
トラベル事業 事業長
一方、旅行においても消費者の趣味・嗜好は多様化している。モノ消費からコト消費への変化が目立つなど、宿泊だけにとどまらず、さまざまなアクティビティを楽しみたい、その場ならではの体験・交流を目的とするニューツーリズムというトレンドも見られる。日本の宿泊施設や観光地が国内だけではなく世界の人々から選ばれ続けるためには、こうしたトレンドの変化も見据えていくことが重要だ。
こうした中で、オンライン旅行業界の雄は次なる一手をどう打つのか。「楽天トラベルならではの、会員基盤とデータ、ブランドという強みを最大限に活用し、旅行者と宿泊施設のベストマッチングの精度をより高めていく」と答えるのは楽天トラベル事業長の高野芳行氏である。どういうことか。
まさに一大経済圏を成している楽天のサービス。旅行だけではない生活情報のデータを活用できることが強み
ご存知のとおり、楽天グループはインターネットを使ったさまざまなサービスを展開している。楽天市場や楽天カード、楽天証券、楽天ウェディング、楽天チケット、ラクマなど、楽天グループ全体の会員数は国内が約9520万人、世界では12億人にのぼるほど。今回のリニューアルは、こうした巨大な楽天経済圏で蓄積したデータを最大限活用し、予約時のマッチングをより高いレベルで実現しようというのだ。
楽天経済圏のビッグデータをフル活用
「旅行に出かける機会は年数回というお客様が多いため、旅行サービスだけを行う企業の場合、お客様の多種多様なデータにふれる機会は限られています。しかし、私どもにはグループ全体のさまざまなサービスに蓄積された購買履歴などをはじめとする膨大なデータがあります。これにより、お客様がどのようなライフスタイルで、趣味・嗜好は何か、といったことを理解し、精度の高いパーソナライゼーションが実現できるのです」
具体的に、多様な業種をまたいだビッグデータを活用することで何が起こるのか。これらのデータを、最新のAIの技術を駆使して解析すると、たとえば、ユーザーの画面に、よりユーザーにマッチした宿やサービスがさまざまな形で表示できる。ペット商品の購入履歴があるユーザーが宿泊先を検索すると、ペットフレンドリーな宿泊施設が表示されたり、関連の広告や記事が出てきたり、といった具合だ。こうしてユーザーはいち早く求める宿泊施設を見つけられ、検索の手間や時間を大幅に減らすことができる。
「精度の高いマッチングをしようとする場合、どこで差がつくのか。やはり、解析の対象であるデータそのものの価値が高まっていくことは間違いありません。私どもの大きな強みである多種多様、かつ膨大なデータが、お客様に新しい体験をしていただく源泉ともなるのです」
宿泊施設にもメリットがある。AIを活用することによって、その宿泊施設を好み、何度も通うようなファンになってくれそうな旅行者に絞ってアプローチしたり、プロモーションを実施したりできるので「泊まってみたら期待と違った」というケースが少なくなり、顧客満足度も向上するだろう。宿泊施設としても、自ら演出したい世界観に親和性の高い顧客が訪れることにもつながる。宿泊者、宿泊施設の双方をマッチングした理想的な場を生み出すことになるのではないだろうか。
「ユーザーインターフェースの変更のポイントは、モバイルファースト、シンプル、グローバルの3つです」と高野氏。背景には、近年の旅行市場を取り巻く環境とユーザートレンドの大きな変化がある。今やサイト利用の多くがスマホにシフト。求められるインターフェースも画像や動画などを中心とした、直感的で、シンプルなものを好むようになっている。こうした傾向は海外でも同じ。インバウンド市場の急拡大を見るまでもなく、世界中のユーザーに使いやすいサイトであることは、最初に選ばれるOTAとして欠かせない要素だ。
また、旅行者は、さまざまな宿泊のカスタマイズも可能になる。これまでは、たとえば朝食付き、家族風呂やエクストラベッド、アメニティのグレードアップといったオプションが客室とセットになった「宿泊プラン」の形態で販売されていたが、リニューアル後は客室のタイプ、多彩なオプション、さらには適用可能な割引などプロモーションの3つをそれぞれ選択し、自由に組み合わせて予約できるようになる。ユーザーは旅をより自分好みにデザインすることができ、宿泊施設もどのオプションあるいはプロモーションの人気が高いのかを明確につかめる。人気のオプションを強化したりプロモーションに活用したりと、宿の強みを最大限に生かすきっかけにもなるだろう。
さらにリニューアル後は、宿泊施設だけでなく、航空券やレンタカーやバス、アクティビティなどについても、一括で予約できるようになる。「検索→選択→予約」というフローを繰り返さずに、一つのプロセスの中で旅のすべてを予約できるのだ。
地名などで検索後、宿泊施設を選択すると、まずは部屋のリストが出てくる
部屋を選択したあとに出てくるオプション選択画面
予約途中の画面。宿泊施設、フライトなどを選択すると、旅程の形で見やすく一覧表示される。すべて選択し終えたら、一括で予約へ
こちらもマイページ内のいち画面。決済方法や銀行口座、キャンセルポリシー、日程、人数などを一覧で表示。必要情報をまとめて確認でき、変更も簡単にできるようになる
一方、宿泊施設に対しては、カスタマイズできるページの入力作業を容易にした。SNSに投稿するのと同じ要領で、画像と簡単なコメントをスマホから次々アップできるという。これにより、その宿ならではの特色や魅力、よりホットな情報を宿自身から打ち出しやすくなる。さらには、一回の入力作業で多言語にも展開できる。これにより訪日客の検索にも対応できる。
旅行業界をエンパワーメントしていく
では、こうした全面リニューアルの先に、どんな世界を描いているのだろうか。高野氏に聞くと、「一つの理想形として」との前置きの後に、こんな答えが返ってきた。
「たとえば、楽天トラベルで検索して上位に出てきたホテルを予約して訪れてみたら、部屋には自分が大好きなアロマオイルが焚かれていて、家具も自分の趣味にぴったり合っていた、といった体験ができるところまでいきたいですね」
つまり、予約サイト上で超高度なベストマッチングを実現することで、サイトには表現されていなかったことまでその人の趣味に合う宿泊施設が結果的に選択できていた、という世界だ。
そして、インタビューの最後を次のように締めくくった。
「今後インターネットサービスは、いよいよグローバルな競争になります。その中で日本のインターネット企業がきちんとグローバルに展開して勝ち抜いていかないと、日本の成長もないのではないでしょうか。日本発のインターネットサービスである楽天トラベルは、今回のリニューアルによって、これまで以上に宿泊施設の魅力を引き出し、エンパワーメントしていきたい。もちろん旅行者の皆様にも、すばらしい旅の体験を提供し続けていきます。それが、旅行業界全体のエンパワーメントにもつながっていくと信じています」
