宇宙のビッグデータを基に生まれるビジネス 社会インフラへ発展の可能性
日本発の宇宙(衛星)データビジネスで世界へ
政府は17年5月、「宇宙産業ビジョン2030」を発表した。ここでは、「宇宙産業は第4次産業革命を進展させる駆動力。他産業の生産性向上に加えて、新たに成長産業を創出するフロンティア」と記載されている。おりしも、「AW3D®」は、16年3月に発表された内閣府の「第2回宇宙開発利用大賞」で、内閣総理大臣賞を受賞した。
岩本氏は「興味深いのは、『AW3D®』の利用のされ方です。ベトナムで『AW3D®』を利用した土砂災害の危険個所の識別など、デジタル3D地図上にさまざまな情報が積み重ねられ、ビッグデータの活用が進んでいます。その点で、JAXAの衛星はまさに地球のあらゆる場所にさまざまなIoTセンサーを付けているようなもので意義深いと感じています」と話す。
衛星が世界規模の課題の解決に貢献しようとしているわけだ。奥村氏は「赤道直下の熱帯雨林での違法伐採を防止するといった取り組みにもJAXAのデータが使われています」と紹介する。「だいち」のレーダー画像を用いて09年から12年までアマゾン流域における森林伐採状況を監視し、違法伐採面積を40%減少させることに大きく貢献したという。このほか、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)および「いぶき2」(GOSAT-2)は、パリ協定に基づき各国が国連に報告する二酸化炭素排出量の妥当性検証にも使われることをめざしている。
NTTデータグループはすでに世界51の国と地域に11万人のスタッフを擁している。岩本氏は視線の先をグローバルに置きながら、「『AW3D®』に限らず、IoT、AI、ビッグデータの時代がすべての世界を変え始めています。JAXAをはじめさまざまな方々と一緒にその世界を切り開いていきたいと願っています」と力を込める。
18年3月3日には、宇宙探査に関する閣僚級会合「第二回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)」が東京で開かれる。国際協力による今後の宇宙探査に関する議論には国の機関だけでなく、産業界も期待をよせている。この会議において日本はホスト国として重要な役割を担う。
奥村氏は「JAXAのコーポレートスローガンは『Explore to Realize』です。宇宙産業の分野の方々のみならず、宇宙という共通のアセットをぜひ、それぞれの産業界の方に活用いただき、日本の産業発展に貢献したいと考えています」と結んだ。
※「AW3D®」は、株式会社NTTデータと一般財団法人リモート・センシング技術センターの登録商標です。