宇宙のビッグデータを基に生まれるビジネス 社会インフラへ発展の可能性
世界初、5メートル解像度で世界中の3D地図を提供
2014年2月――。ある画期的なサービスがリリースされた。「全世界デジタル3D地図提供サービス(AW3D®)」である。JAXAとNTTデータ、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)が連携し誕生した、世界で初めて5メートル解像度を実現した精密な数値標高モデルで、世界のすべての地域の陸地の起伏データを整備し、商用でサービスを開始した点に特色がある。現時点でもこの利便性をしのぐサービスは出ていない。
開発・販売を行ったNTTデータ 代表取締役社長の岩本敏男氏は「サービス開始以来、すでに73カ国、500以上のプロジェクトで採用されています。大震災後のハザードマップ作成、都市の地滑り災害対策など、主として新興国を中心に防災分野などで活用されています」と紹介する。
民生用として世界初の精細な3D地図が誕生したわけだが、そもそもJAXAとNTTデータがパートナーシップを組む経緯はどこにあったのだろうか。JAXA理事長の奥村直樹氏は次のように語る。
「かつて宇宙開発は、米国、旧ソ連、欧州などが国策として行うものでした。しかし、技術が成熟すると必ずしも国だけでやるものではなく、民間企業が参加することにより、より効果的なやり方、違った視点での開発ができます。JAXAでは陸域観測技術衛星『だいち』(ALOS)によって全世界の地表を撮影し、解析・利用をすすめてきました。その中でデータの大量処理に関する研究開発を行った結果、月15万枚程度処理できる見込みが立ちました。そこで、このリソースの有効活用を図るため、NTTデータに参加いただき、約300万枚の衛星画像を用いて全世界の陸域をカバーするデジタル3D地図が完成しました」。
衛星は打ち上げの場面が注目されがちだが、本来の目的はデータの収集と利用である。多くの人が活用するためには、利用しやすい形に加工処理することが重要になるが、その点でノウハウや技術に長けたNTTデータが参加したことで大きく前進した。