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オリンピックの知られざるもう一つの舞台 ビジネス視点の平昌2018冬季オリンピック

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  • P&G 制作:東洋経済企画広告制作チーム
2年に1度、世界中の人々を熱く魅了するオリンピック。今年も2月9日~25日までの17日間にわたり開催された平昌2018冬季オリンピックに、夢中になった方も多いことだろう。日本をはじめ、参加国の選手たちが活躍する輝かしい舞台の裏には、このビッグイベントを支える数々のスポンサーが存在している。オリンピックを一企業の「ビジネス上の戦略」という視点からとらえると、表舞台とはまた違った光景が見えてくる。

世界中の注目を集めた「Thank You, Mom」とは

オリンピックのスポンサーにはいくつかの種類がある。国際オリンピック委員会(IOC)と「TOP(The Olympic Partner)プログラム」の契約を締結するのは、ワールドワイドオリンピックパートナーと言う。「TOP」という名の通り、最高位スポンサーとして世界中で自社製品・サービスとオリンピックを絡めたキャンペーンを展開できる権利が与えられる。平昌2018冬季オリンピックの最高位スポンサーは13社。そのうちの1社が日用消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)だ。

衣料用洗剤「アリエール」や柔軟剤「レノア」、ヘアケアブランド「パンテーン」、乳幼児用紙おむつ「パンパース」、エアケア製品「ファブリーズ」などP&Gの製品は生活になじみの深いものが多い

P&Gは世界約180カ国で事業を展開するグローバル企業であり、日本でも衣料用洗剤「アリエール」やエアケア製品「ファブリーズ」などのブランドで広く知られている。

その一方で、マーケティング戦略においても世界トップクラスの企業という側面を持ち、オリンピックもビジネス戦略の一環として活用している。

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン 執行役員 ブランドマネジメント 
松浦香織

P&Gでマーケティング部門のヘッドを務める松浦香織氏は「私たちは自社商品に絶対的な自信があります。マーケティングとは、こうした商品に対して消費者の知覚変動を起こすこと。つまり、いままで必要ないと誤解していたり、欲しいと思わなかったりしたものを購買につなげることだと考えています。

当社の場合、マーケティング活動を一時的な企画や広報として行うのではなく、成長戦略の根幹としてとらえている点が他社にはない強みです」と言う。

P&Gがオリンピック最高位スポンサーに就いたのは、2010年7月。その背景について松浦氏は「スポーツを通じてよりよい世界を構築するというオリンピックの精神と、世界中の人々の暮らしをよりよくしていくというP&Gの企業理念が合致するため」と話す。

2012年のロンドン大会を手始めに、ソチ2014、リオ2016、平昌2018冬季オリンピック、そして2020年開催予定の東京オリンピックまでの5大会を支援する傍ら、P&Gは世界共通のテーマ「ママの公式スポンサー(Thank You, Mom)」の下、オリンピック出場選手とその母親や家族を応援するキャンペーンを全世界で展開している。

たとえばこれまでの4大会では、一貫してオリンピックで活躍するアスリートたちと、その陰で彼らを子どもの頃からずっと支え続けてきた母親たちの存在をフィーチャーしたグローバル版のCMを制作してきた。ロンドン2012では、「Thank You, Mom (Best Job篇)」を制作し、2012年のオリンピック動画視聴回数14,751,440、シェア数2,182,257で共に世界一にもなっている(2016年時点UNRULY調べ*、2012年3月1日〜10月31日すべてのオリンピック広告)。

平昌2018に際しては、「Thank You, Mom(ゆるぎない母の愛篇)」と題して、さまざまな不平等や先入観などの困難に直面しながらも夢に向かって努力するアスリートたちと、彼らをゆるぎない信念と愛を持って応援する母親の姿を映し出した動画を配信。昨年11月1日の公開後わずか1週間でYouTubeやFacebookなどのソーシャルメディアで5600万回以上視聴され、世界中の注目を集め大きな共感を生んだ。

オリンピックマーケティングの成功モデルを確立

日本でも「ママの公式スポンサー」キャンペーンのアンバサダー、羽生結弦選手(男子フィギュアスケート)を起用したTV-CM「『お母さん、ありがとう。』羽生選手篇」が放映されたのは記憶に新しいことだろう。同社のSNSにはグローバルCMおよび羽生選手篇CMを見て「泣いてしまった」という母親自身の投稿や、「リビングでお母さんが泣いています」という娘からの投稿などが次々と上がり、多くの共感を呼んだことがうかがわれる。

さらに、クイズに答えて平昌2018冬季オリンピック観戦ツアーが当たるオープン懸賞と、P&G対象商品を買って国内アイスショー観戦チケットなどが当たるクロスブランド・プレゼントキャンペーンを実施。オリンピックを通じて、P&Gという企業と製品ブランドをひもづけ、さらにCMに共感した人たちの購買にも結び付ける取り組みを展開した。

最終的な応募者数は公表していないが、「プレゼントキャンペーン開始から4週間で、リオ2016の2倍以上の応募をいただきました。また、リオのキャンペーン期間中は期間外に比べ、弊社製品の新規購入率が20~30%向上したという結果を得ています。単なるプロモーションではなく、キャンペーンに対する共感が『P&G製品を使ってみよう』という購買動機につながる、まさにビジネスモデルとして確立しているのです」と松浦氏はマーケティング戦略が大きな成果を収めた実例をあげる。

一方、過去4大会の現地会場では、選手とその家族が利用できるゲストハウス「P&Gファミリーホーム」を提供した。無料のカフェ、試合観戦用のモニタールーム、インターネットのほか、P&G製品を使用したヘアスタイリングサービス、グルーミングサービスなどを利用できるなど、P&Gらしい方法でもてなした。

平昌2018でも選手と家族用ゲストハウス「P&Gファミリーホーム」を開設

*UNRULY(アンルーリー)は、2006年設立の動画マーケティング企業。人々にリーチするだけでなく視聴され、シェアされ、共感される動画マーケティングを目指している

異国での滞在を心地よく過ごせるよう配慮が行き届いている。 写真下は女子フィギュアスケート銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ選手

「平昌2018冬季オリンピックにおいても、期間中に現地で『P&Gファミリーホーム』を開設しました。『P&Gファミリーホーム』には、オリンピック選手とご家族が気苦労の多い異国での滞在を心地よく過ごしていただきたいという目的がありますが、つい忘れがちな家族の大切さや感謝の念を改めて考えていただく場にもしていただきたいという意図があります。

消費者の皆様方にも、オリンピックの感動だけではなく、選手と家族のつながりを通して、ご自身のお母様やご家族への気持ちを再認識していただければと思います」と松浦氏は一連のキャンペーンの趣旨を語る。

もちろん、そこにはP&Gが日本そして、世界中の母親を応援する企業であることに気づき、その姿勢に共感してほしいとの含意がある。オリンピックという特別なイベントを活用して、言外にある狙いを消費者に響き渡らせるプロモーションの手法は、世界トップクラスのマーケティング力を誇る同社ならではのものと言えるだろう。

若手社員がリーダー、東京2020へ

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン オリンピック マーケティングマネージャー
秋山史門

しかも驚くことに、こうしたビジネスモデルやプランの設計全体を担うのは同社の若手社員だ。この大役を司ったオリンピックマーケティングマネージャーの秋山史門氏は、「若手自身がプロジェクトの目的や目標を設定し、アイデアの発起人になれるなど、多くの裁量権を与えてくれるのがP&Gの優れた文化だと思っています。

オリンピックの場合、『Thank You, Mom』というグローバルのアイデアを『ママの公式スポンサー』というローカルな展開に落とし込み、P&Gというコーポレートブランド及び製品ブランドへの共感につなげていくこと。そのためにCMやプロモーションを企画立案し、小売店様と強い協業を結ぶこと、そして最終的に消費者の皆様に購買行動を起こしていただくまでの設計全体が、私の仕事になります。

特に、小売店様との協業は非常に大切で、すでに東京2020に向けて小売店様からご要望やアイデアをいただき、どのように展開を広く大きくしていくのか協議しているところです」。

秋山氏は続ける。「2020年に向けての取り組みはもう始まっています。この先、先頭に立って大きな役割を担っていくのは、これからP&Gに入社してくる新入社員であり、きっと大きな牽引力になってくれると考えています」自由で革新的な発想力に富んだ若手社員の活躍と、P&Gのオリンピック戦略がどう進化していくのか今後も注視したい。