オリンピックの知られざるもう一つの舞台 ビジネス視点の平昌2018冬季オリンピック

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たとえばこれまでの4大会では、一貫してオリンピックで活躍するアスリートたちと、その陰で彼らを子どもの頃からずっと支え続けてきた母親たちの存在をフィーチャーしたグローバル版のCMを制作してきた。ロンドン2012では、「Thank You, Mom (Best Job篇)」を制作し、2012年のオリンピック動画視聴回数14,751,440、シェア数2,182,257で共に世界一にもなっている(2016年時点UNRULY調べ*、2012年3月1日〜10月31日すべてのオリンピック広告)。

平昌2018に際しては、「Thank You, Mom(ゆるぎない母の愛篇)」と題して、さまざまな不平等や先入観などの困難に直面しながらも夢に向かって努力するアスリートたちと、彼らをゆるぎない信念と愛を持って応援する母親の姿を映し出した動画を配信。昨年11月1日の公開後わずか1週間でYouTubeやFacebookなどのソーシャルメディアで5600万回以上視聴され、世界中の注目を集め大きな共感を生んだ。

オリンピックマーケティングの成功モデルを確立

日本でも「ママの公式スポンサー」キャンペーンのアンバサダー、羽生結弦選手(男子フィギュアスケート)を起用したTV-CM「『お母さん、ありがとう。』羽生選手篇」が放映されたのは記憶に新しいことだろう。同社のSNSにはグローバルCMおよび羽生選手篇CMを見て「泣いてしまった」という母親自身の投稿や、「リビングでお母さんが泣いています」という娘からの投稿などが次々と上がり、多くの共感を呼んだことがうかがわれる。

さらに、クイズに答えて平昌2018冬季オリンピック観戦ツアーが当たるオープン懸賞と、P&G対象商品を買って国内アイスショー観戦チケットなどが当たるクロスブランド・プレゼントキャンペーンを実施。オリンピックを通じて、P&Gという企業と製品ブランドをひもづけ、さらにCMに共感した人たちの購買にも結び付ける取り組みを展開した。

最終的な応募者数は公表していないが、「プレゼントキャンペーン開始から4週間で、リオ2016の2倍以上の応募をいただきました。また、リオのキャンペーン期間中は期間外に比べ、弊社製品の新規購入率が20~30%向上したという結果を得ています。単なるプロモーションではなく、キャンペーンに対する共感が『P&G製品を使ってみよう』という購買動機につながる、まさにビジネスモデルとして確立しているのです」と松浦氏はマーケティング戦略が大きな成果を収めた実例をあげる。

一方、過去4大会の現地会場では、選手とその家族が利用できるゲストハウス「P&Gファミリーホーム」を提供した。無料のカフェ、試合観戦用のモニタールーム、インターネットのほか、P&G製品を使用したヘアスタイリングサービス、グルーミングサービスなどを利用できるなど、P&Gらしい方法でもてなした。

平昌2018でも選手と家族用ゲストハウス「P&Gファミリーホーム」を開設

*UNRULY(アンルーリー)は、2006年設立の動画マーケティング企業。人々にリーチするだけでなく視聴され、シェアされ、共感される動画マーケティングを目指している

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