前編ではSlackの紹介をしてきたが、後編となる今回はSlackが世界中のユーザーになぜ受け入れられているのか。つまり、ほかのツールといかに違うのかを説明していきたい。
「生産性向上」「働き方改革」にも寄与
Slack利用企業1629社のアンケートを見てみると、前編で触れた「生産性を平均32.0%向上している」だけでなく、「ミーティングの数を平均25.1%削減している」「Eメールの数を平均48.6%削減している」「80.4%の企業の透明性を向上している」という具体的な数値が並ぶ。
その理由は、カル・ヘンダーソンCTOが語っていた「さまざまなアプリケーションやツール、サービスが連携して動作する」、「複数のシステムやサービスにまたがる情報を簡単に検索できる」からにほかならないが、具体的にはどういうことなのか。
たとえばSlack上で営業部門の人たちがビジネスについての会話をしていて、その際に顧客情報を調べる必要が生じたとしよう。通常であれば、顧客情報を管理するアプリケーションやクラウドサービスをPC上で新たに起動させて、必要な情報を検索することになる。そういう時にこそ、Slackは力を発揮する。
「Slackは、顧客情報を管理するシステムと連携することができるので、Slackの画面上にあるボタンで顧客情報にアクセスすることができるのです」(ヘンダーソンCTO)
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デスクトップ(左)と携帯(右)でのSlackの表示。複数の人と同時にコミュニケーションができ、カレンダーの共有やファイルの添付も簡単だ
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Slack上で顧客情報を見ることができれば、別のソフトを起動させたり、画面を交互に開いて見比べたりといった手間を省くことができる。「調べた情報を会話している相手と簡単に共有できるため、システム間で情報をコピー・ペーストするなど面倒な作業も必要ありません」(ヘンダーソンCTO)。つまり、Slackの画面上で「業務に必要なコミュニケーション」と、「コミュニケーションをするために必要なデータ共有」の両方を実現できるため、システムの操作時間などが大きく短縮できるのだ。

アプリケーションごとに上がってくる通知をSlack上で表示することも可能だ。営業支援システムであれば、「そろそろこの顧客に訪問すべき、といった通知が出ることがありますが、こうした通知もSlack上に集約できます」(ヘンダーソンCTO)。
コミュニケーションや検索にかかる時間を短縮することは「生産性向上」にも寄与することを意味する。さらに、PC上のコミュニケーションが容易に、かつ密になれば、社員が一つの空間にいる必然性も薄まる。つまり、Slackを導入し、社員のリモートワークの環境を整えれば、「働き方改革」を実現するうえで大きな助けになるだろう。
「社員が辞めて情報流出」も防ぎやすい
企業がコラボレーションツールを使う場合、当然セキュリティが重要になる。Slackは、「さまざまなシステムに1度のログインでアクセスできるようにする『シングルサインオン』の機能や、社員ごとに閲覧できるチャンネルを細かく制限する機能、チャンネルでの会話を保存する機能などがあります」(ヘンダーソンCTO)。社員が辞めた際に自動的にチャンネルやデータにアクセスできないようにすることも可能だという。
カル・ヘンダーソン
CTO兼共同創立者
チャンネルでの会話を永続的に保存する機能は、セキュリティ機能の中でも非常に重要だという。ヘンダーソンCTOは「金融機関など規制の厳しい業界では、何か法的な事象が出てきた場合に、過去の時点でどのようなやり取りが行われたかを確認しなくてはならないケースがあります。Slackはそういった規制などにすぐに対応できる形で会話を保存することができます」と説明する。
これとは反対に、あるデータに関するやり取りなどをプライバシーの問題で一定期間後に消さなくてはならないケースもあるという。「そういった場合にも自動的にデータを消去する設定が可能です」(ヘンダーソンCTO)。
チャンネルの会話の保存にはセキュリティとは別の利点もある。あるトピックについての意思決定が過去になされていた場合、どうしてそれが決まったかをいつでも簡単に調べることができるのだ。過去の経緯を参考に新たな意思決定をすることもたやすくなる。
気になれば無料版を試すべし
Slackには有料版と無料版がある。その違いについてヘンダーソンCTOは「無料版にはいくつかの機能制限があります。有料版であれば過去のメッセージを全て見ることができますが、無料版は1000メッセージまでに制限されます。シングルサインオンなどセキュリティに関する多くの機能も無料版にはありません。それでもコミュニケーションについて多くのメリットが享受できるため、無料版を利用しているユーザーは有料版の3倍以上います」と語る。
ここまで見てきたことからわかるように、Slackは単なるコラボレーションのツールではなく、ビジネスで必要な作業のほとんどを実行できる「プラットフォーム」と言える。コミュニケーションやデータの参照、会話や会議のログの記録・検索に困っていたり、日々同じアプリケーションを何個も立ち上げて画面を繰り返し行き来することに不満を感じたりしている企業は多い。
それらの課題を解決し、「生産性を上げたい」「柔軟な働き方を導入したい」、あるいは「話題になっているからちょっとやってみたい」……。理由はともあれ、そのようなことを考えるなら、ひとまず小規模グループで導入してみるといいだろう。無料版でも、その機能の多くを使うことができるのだから。

