キリンが挑む日本ワインとCSVの未来とは

自社栽培のブドウ畑が多様な生物を育む

この調査を受けて椀子ヴィンヤードでは16年から、従業員参加による希少種を含む在来植物の再生・保全活動を開始している。ブドウ畑や周辺で生育していた植物の一部を秋に刈り取り、再生予定地に敷く。うまく行けば人の手によりまかれた種が育ち、ブドウの害虫を捕食する天敵昆虫を含む生物が移動や生息地に利用できる緑地帯が生まれるという。より生態系豊かなブドウ畑への取り組みはこれからも続けられる。

植生再生活動の様子と新たに定着した植生物の一例(カワラマツバ(左上)、クサフジ(下))

CSVを経営の根幹に位置づけ
グループ一丸となって取り組む

松尾氏は「日本ではまだ、ワインを飲むのは『特別な日』という印象がありますが、欧米のように普段の食卓にワインが並ぶようになってほしいですね。『シャトー・メルシャン』だけでなく、日本ワインのおいしさを知っていただき、多くの方に楽しんでいただきたいと願っています」と話す。新しいニュースもある。シャトー・メルシャンの原料ブドウ産地の一つである長野県で18年9月に「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー」、19年秋に「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」を新設するという。椀子ワイナリーは、畑から醸造までを見学できたり商品を購入したりできるブティックワイナリーとして新設されるというから楽しみだ。

ここまで、キリンおよびメルシャンのさまざまな取り組みを紹介してきたが、大きな特長は、それぞれが慈善的な活動にとどまらず、事業活動によって社会課題の解決を目指すCSV(Creating Shared Value)を実践していることだ。

キリングループは13年、2050年を見据えた長期戦略「キリングループ 長期環境ビジョン」を策定している。この中で特に、「資源循環100%社会の実現」に向けた取り組みとして、「生物資源」「水資源」「容器包装」「地球温暖化」の四つの課題を設定している。これらの課題への取り組みについては、キリングループは業界をリードする存在であり、すでに高い評価を得ているという。その中でも重要なテーマと考えられているのが「生物資源」、すなわち原材料や生産地の課題解決である。

長期環境ビジョンでは「2050年までに、生物資源を持続可能な形で使用していることを目指す」としている。原料生産地のサスティナビリティのための活動では、国産ブドウの生産のほか、複数のプロジェクトが動き始めている。たとえば、「キリン 午後の紅茶」の主要原料生産地スリランカでは、持続可能な農園認証制度レインフォレスト・アライアンス認証を農園が取得することを支援。また、国内有数のホップ生産量を誇る岩手県遠野市ではホップ畑の生物多様性調査を行っている。それぞれの活動には、グループ従業員も数多く参加しているという。

キリングループでは長期経営構想「新・キリン・グループビジョン2021」においてもCSVを経営の根幹に位置づけている。まさにグループ一丸となった取り組みの進展に、大いに期待が高まる。

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