キリンが挑む日本ワインとCSVの未来とは

自社栽培のブドウ畑が多様な生物を育む

「垣根栽培のブドウ畑の大きな特長は、棚栽培と異なり下草が生やせるため、畑そのものが広大な草原としての機能を持つことです」と国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)農業環境変動研究センター 生物多様性研究領域 上級研究員の楠本良延氏は語る。

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境変動研究センター 生物多様性研究領域
上級研究員

楠本 良延
「日本のヴィンヤードの生態系調査事例は少ないことから、学術的にも貴重です」

「生態系の保全というと、樹海のような森をイメージするかもしれませんが、実はそのような環境では草原などにいる多様な生き物は育ちにくいのです。放置された荒れ地も同様です。一方で、ブドウの垣根栽培は年に数回下草刈りを行うため、草原性の在来種や希少種などさまざまな植物に日が当たることになり、それらが生育することが可能になります。まさに理想的な『草原』です。特に『椀子ヴィンヤード』は、周囲の田畑や雑木林、草原などがモザイク状に接し、国内はもとより世界でも珍しい里地里山のヴィンヤードになっています」

具体的な調査結果も出ているようだ。キリンおよびメルシャンでは2014年から楠本氏が所属する農研機構・農業環境変動研究センターの研究員を招いた生態系調査を行っているが、ヴィンヤードの中で多様な生き物が見つかったという。

「すでに258種の野生植物と30種の植栽種、168種の昆虫が確認できています。クララ、スズサイコ、メハジキ、ユウスゲなど、絶滅危惧種を含む希少種も見つかりました。世界的に見てもヴィンヤードの生態系調査事例は少ないことから、学術的にも貴重です」

生態系調査の様子と現地で見つかった希少植生物の一例(メハジキ(左下)、クララ(右))

加えて楠本氏が指摘するのは、二次的自然(里地里山など、人が手を加えることで維持、管理されてきた自然環境)の重要性だ。

「二次的自然には絶滅危惧種などの希少種が多く生育しています。一方で、130年以上前には日本国土の30%を草原が占めていましたが、現在は1%にまで減少しています。国内では、茶生産により維持される茶草場などが貴重な二次的自然となっています。その点で、『椀子ヴィンヤード』の取り組みは、二次的自然を増やすという点でも大きな意義があります。ほかのヴィンヤードにも展開し、取り組みを広げてほしいと期待しています」

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