小田急新ダイヤで勃発、京王との乗客争奪戦 始発駅増と値下げ、どちらの戦略に軍配?

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小田急の星野晃司社長は利便性向上や混雑緩和で、潜在顧客の掘り起こしを進める考えだ(撮影:風間仁一郎)

具体例の一つが南武線と接続する登戸だ。南武線はいくつかの駅で都心に向かう鉄道路線と接続する。たとえば分倍河原で京王線、稲田堤で京王相模原線の京王稲田堤、武蔵溝ノ口で東急田園都市線・溝の口といった接続が可能だ。

都心に出る際にこれらの駅で乗り換えていた南武線利用者が、ダイヤ改正後は、便利になった登戸から小田急を利用する可能性がある。また、町田では横浜線と接続する。横浜線は京王相模原線や東急田園都市線と接続しているため、南武線の例と同様、利用者が競合路線ではなく町田から小田急を利用ようになるかもしれない。

不動産開発ともリンク

駅の利便性が高まれば、その駅周辺のエリアに住んでみたいと考える人も増える。不動産コンサルティング会社・トータルブレインの杉原禎之専務は「多摩ニュータウンは居住者の代替わりが進まず高齢化が心配される。ダイヤ改正で利便性が高まれば、子育て世代が多摩ニュータウンに戻ってくる可能性がある」と指摘する。小田急の星野社長もこうした考えを否定せず、「小田急多摩センター始発の通勤急行を6本新設することと、同駅周辺の不動産開発はリンクしている」と語る。

小田急はダイヤ改正とあわせて、運転士、車掌、駅係員の制服を12年ぶりに一新する(撮影:風間仁一郎)

海老名駅前にはタワーマンションの建設が次々と進んでおり、小田急も300戸クラスのマンションを3棟建設する。小田急が海老名始発の列車を増発するのは、まさにマンション居住者をはじめとする沿線住民に座って通勤してもらいたいという狙いがある。ダイヤ改正を好機として、小田急はほかの駅周辺でも不動産開発を加速させる考えだ。

競合路線から利用客の「乗り換え」を促し、不動産開発でも果実を得るというのが小田急の戦略だ。足かけ30年を要した複々線化工事という呪縛から解き放たれ、一気に攻めの姿勢に転じることができるか。小田急の動きから目が離せない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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