台湾の玉山銀行が日本進出で果たす使命とは 中小企業の海外進出支援に大きな期待
「東京は世界有数の金融市場であり、経済規模も大きく、台湾と日本は長年にわたり友好関係を築いています。また、企業がアジア市場に展開するうえで日本は極めて重要な拠点でもあります。そのため以前から日本進出を計画していました。そして昨年、日本の金融庁から許可が下り、今回、念願の東京支店開設が実現しました」(黄総経理)
玉山銀行は台湾で、個人金融、法人金融、資産管理、ファイナンス、クレジットカードの各事業を中心に、総合的な金融業務を行っている。また「リスクを冒さない業務展開」という原則を掲げ、各事業部にそれぞれリスクマネジメント部門を設けている。日本でも同様の体制を取り、フルスペックのサービスを提供する方針だという。なかでも日本の中小企業の海外進出支援には、特に力を入れる方針だ。日本における同行の代表者であり、東京支店の支店長も務める林國維氏が語る。
「日本では中小企業も積極的に海外展開をしています。しかし、海外展開にはさまざまな困難があるのも事実です。当行はこれまで、台湾の中小企業が東南アジア各国に進出する際、金融面に限らず幅広い分野でサポートしてきました。しかも当行は中国や東南アジアにネットワークを展開しているため、進出先でも継続的にサポートを提供することができます。そうした実績と経験を生かし、日本でも中小企業のお客様にファイナンス面だけでなくビジネスマッチングやコンサルティングなども含めて多様で幅広いサポートをしていきます」
日本での富士山のように高く美しい銀行を目指す
実は林支店長は、すでに20行近い日本の地銀を訪問している。地方にも海外進出を計画する中小企業は数多く存在するが、地銀の多くはそうした企業に対する支援の経験が少ない傾向にあるという。そこで玉山銀行は地銀と提携して、日本の中小企業支援に取り組む方針なのだ。中小企業にとって豊富な経験を持つ玉山銀行による支援は何とも頼もしい限りだが、人口減少や超低金利という困難に直面している多くの地銀にとっても、玉山銀行との提携はメリットが大きいのではないだろうか。
「さらに在日台湾人のお客様に対する金融サービスも提供していきます。東京支店は、日本の中小企業が海外展開するときのプラットフォームになるとともに、日台関係を一層緊密なものにするための架け橋にもなりたいと考えています。そのためにもまずは東京支店の基盤確立に全力を挙げます」(林支店長)
意外に知られていないが、台湾には玉山という山がある。標高3952メートルの玉山は、台湾で最も高く、美しい山として台湾人に親しまれている。玉山銀行というのは、その山のように最も高く美しい銀行を目指すという意味でつけられた名称だ。黄総経理に「台湾で最も高く美しい銀行になれたか」と問うと、「なれたと思います」という答えが返ってきた。
玉山は、日本での富士山のような存在だという。この夏、黄総経理らは敬意を表して富士登山をした。より高く美しい銀行を目指し、玉山銀行の日本での挑戦がいよいよ始まる。