キリン「新・一番搾り」好調の舞台裏 缶製品、9月単月で前年比21%増の快進撃
定番商品が起こす快進撃に驚きの声
「今夏はビール全体が不調の中で、わが社ではリニューアル後の『一番搾り』の販売数量は前年比で約30%も増えています。テレビCMなどのPRも奏功したと思いますが、意外なほどの健闘ぶりでした」。そう驚くのは、小売り現場のビール販売動向を見つめる大手コンビニのビール類担当者だ。消費者の嗜好の多様化に伴って、近年のビール消費は伸び悩んできた。特に、今夏は、東日本を中心に記録的な長雨、酒類の安売り規制強化といった逆風も強まっていただけに、「新・一番搾り」の販売数量の増加は目を引いた。
「ビール類は、クラフトビールや新ジャンルなど多様な切り口の商品を発売することで嗜好の多様化に対応していますが、ビール類が下降トレンドにあることは否めません。その中で『一番搾り』のような定番商品がこれほど伸びるのは、ほとんどありえないことです」と大手コンビニのビール類担当者が指摘するのも、近年のビール市場の動向が背景にある。
「ビールのおいしさ」と全力で向き合う
「一番搾り」は「日本の皆様が毎日でも飲みたいと思ってもらえる美味しいビールをつくろう」と開発され、1990年に発売された。2020年には30周年を迎える、キリンビールの基幹ブランドである。今回は、2009年と2014年に続いて3回目の大幅リニューアルとなるが、注目したいのは3年連続で販売数量は前年超えを記録していることである。それでもキリンビールがリニューアルに踏み切ったのは、これまでこだわってきた一番搾り麦汁しか使わない「麦のうまみ」をさらに追求し、「ビールってやっぱりうまい」という驚きと喜びを消費者に再び体感してもらいたかったからだという。