「普及させなければ意味がない」の矜持 ダイハツが良品廉価で広める安全安心の技術
やってみよう!の精神
6万円が10万円になったら意味がない
最新の予防安全機能を誰もが使えるものにしたいという同社の姿勢は、モノ作りにおいても徹底している。
「いい品を安く提供するため、当社では昔から1円1ミリ1グラムにこだわったモノ作りを行ってきました。それを一言で表すのが『良品廉価』という考えです。『スマアシ』は2012年に5万円で登場しましたが、デバイスが格段に進化した最新の『スマアシⅢ』でも6万円に抑えています」
良品廉価の追求はチャレンジの連続だが、ダイハツにはそれを後押しする社風があるという。2012年に「ムーヴ」が軽自動車で初めてASVとして最高評価を得たことをはじめ、さまざまな「業界初」を成し遂げてきた。

「これまで、ダイハツは、新しい技術を小さく安価にすることで、軽という量販車に取り入れ、車社会に普及させる、そういう時代を先取りしたクルマづくりに取り組んできました。軽でありながら広く乗降がし易く子育て世代の支持を得たタント、CVT化やアイドリングストップ搭載など、軽自動車の進化に向き合ってきました。当社はいい意味で小さな自動車会社ですから、お客様や営業の現場と開発部門の距離が短く、意思決定が早く、『やってみよう!』というレスポンスの良さがダイハツという会社が生き残ってきた要素だと言えると思います」
ユーザーにとって本当に必要な技術を提供したいという思いの強さも、ダイハツらしさと言える。
「開発担当者が『スマアシにこんなオプションがプラスできますが、価格が10万円になります』と提案しても、『それは違う』と却下されるでしょう。大切なのは、誰もが手に入れられる価格で、その値打ちのある機能を搭載すること。予防安全機能というとマイカーを連想する方も多いと思いますが、事業用の車にもスマアシは有効です。1回の事故の修理費用は平均17万円(ダイハツ調べ)と言われていますが、『スマアシ』なら6万円。事故による休業ロスも含めた、このような経済的側面だけでなく、従業員の安全を願う事業主の思いからも今後、商用車領域でのスマアシの普及拡大も我々の重要なテーマと考えています」
「スマートアシスト」は軽自動車に限らず、ダイハツの乗用モデルのほぼ全車種に対応しており、搭載車は累計140万台を突破した。同社では、「トール」をはじめとした乗用車でも手応えを感じているという。

「普及してきたとは言え、日本国内を走る車の大半は、予防安全機能が未搭載の車です。商用車の領域も含め、普及促進に向けたダイハツの役割は大きいと再認識しています。当社の新車販売台数は年間約60万台です。その中で『スマアシ』搭載車の割合を少しでも上げることが、ドライバーだけでなく対向車や歩行者の安全安心を提供することにつながるはず。国は2020年までにASV(先進安全自動車)の割合を90%にするとしていますが、軽の量販モデルを持つダイハツの取り組みが普及促進の何らかの触媒役になればと思っています」
自動車メーカー各社が力を注ぎ、日進月歩のASV。ドライバーはもちろんのこと、対向車や歩行者を含めた、社会全体を安全に導く技術だからこそ、誰もが使える形で普及することに大きな意味がある。良品廉価を基盤としたモノ作りは、今後もダイハツの好調な成長を支えていくことだろう。
*2 一般社団法人 全国軽自動車協会連合会 平成28年12月末現在 軽四輪車保有台数と世帯当たり普及台数
*3 一般社団法人 日本自動車工業会「2015年度 軽自動車の使用実態調査報告書」

