
2006年度から11年連続で軽自動車販売シェアランキング1位を記録したダイハツ。2017年度においては、4月から8月現在までの新車販売数が累計23万8619台と34.2%でシェアトップを誇る※1 。その堅調さを支える要因の一つがダイハツ乗用モデルのほぼ全車種に搭載されている予防安全機能「スマートアシスト」だ。2012年12月に発売された「ムーヴ」で採用され、JNCAP(自動車事故対策機構)が行う予防安全性能アセスメントで軽自動車としては初めて最高ランクに認定された。
現在、自動車メーカー各社は運転を支援する先進技術を搭載したASV(先進安全自動車)の開発にしのぎを削っている。そんな中、ダイハツがこだわるのは「予防安全機能を誰もが手に入れやすい価格帯で提供すること」だ。「良品廉価」で安全安心をみんなのものに──。日常生活の足を提供するメーカーとしての強い思いを、ダイハツ工業株式会社 国内マーケティング部 課長の松居康彦氏に聞いた。
業界でも珍しいメーカー主体の体感試乗会
週末になると、ダイハツ社員が交代で赴く場所がある。それは、日本各地のイオンモールの駐車場だ。ダイハツの予防安全機能「スマートアシスト」を実際に体感してもらう「スマアシ」体感会を実施するためである。
2012年に登場した「スマートアシスト」は大きく進化を遂げ、現在は「スマートアシストⅢ」が最新となる。スマートアシストⅢには「衝突警報機能/衝突回避支援ブレーキ機能」「車線逸脱警報機能」「誤発進抑制制御機能」「先行車発進お知らせ機能」「オートハイビーム」という五つの機能があり、「スマアシ」体感会ではこの中の、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防ぐ「誤発進抑制制御機能(前方)」と、警報や緊急ブレーキで衝突を回避する「衝突警報機能/衝突回避支援ブレーキ機能」を実際に体感できる。
ダイハツ工業株式会社 国内マーケティング部 販売企画室 商品政策グループ グループリーダー
ダイハツイズムとも言えるものづくりと安全に関わる思いを存分に語ってもらった
「高齢者に限らず、誰もがうっかり事故を起こす可能性はあります。そのため、体感会にはお子さん連れや、『次に買い換える時の参考に』という高齢のドライバー、『親に使って欲しい』とお考えの若い方々など多くのお客様にご参加いただき、好評をいただいています」。
これまでも地元のディーラーなどが試乗会を行っていたが、ダイハツでは今年5月に「みんなの安全安心プロジェクト」を立ち上げ、メーカーとして「スマアシ」の普及活動に力を入れている。そこには、「日常の足」を提供するメーカーならではの強い思いがあった。


安全安心は「限られた特別なもの」では意味がない
ダイハツでは2017年5月、新型〈ミラ イース〉を発売した。100万円を切るエントリーカーでありながら、最新の「スマートアシストⅢ」が搭載されているミラ イースは、ダイハツの車づくりへの理念と安全安心への思いを具現化したモデルだと言える。
その理由を、松居氏はこう語る。「高級車に先進安全技術が搭載されているのは当然のこと。しかし、日本では軽自動車が広く日常的に使われています。予防安全機能は、通勤や通学、買い物、お子様の送迎などで使われる軽自動車だからこそ、必要なもの。『限られた人が買えるもの』ではなく、みんなのものとして普及させていくことが、われわれダイハツの使命だと考えています」と松居氏は熱く語る。
日本では、軽自動車の保有台数が1977年から増加し続けており、2016年(平成28年)には3055万1361台となっている。これは、100世帯当たりで54.34台の軽自動車が保有されている計算になる※2 。一方、東京や神奈川、大阪、埼玉など、首都圏では軽自動車の保有台数が少ない。つまり、軽自動車は公共交通機関の選択肢が少ない地域において、なくてはならない日常の足となっているのだ。
軽自動車ユーザーは女性が6割を占めるが、普通・小型車から軽に移行する男性も増加傾向にある※3 。「スマアシ」体感会は、こうした軽自動車に乗ったことがない層へ、新たな選択肢を提供する機会にもなっている。
「高級車しか乗ってこなかったという年配男性がスマアシを体感なさって、『これはすごい! 買うよ!』と即、購入を決めたケースもありました。経験上、試乗や体感会の参加と受注には相関があると言えますね。ですが、当社では『スマアシ』体感会は普及活動であり、広報活動と捉えています。予防安全機能の普及には、〈誰にでも手の届く価格であること〉に加え、〈機能を正しく理解していただくための分かりやすさ〉も重要です。その意味でも、体感会は『スマアシ』をわかりやすく伝える大切な機会なのです」
参加者の中にはすでに「スマアシ」搭載車を所有しているダイハツ車ユーザーもいるという。安全に運転をしていれば、緊急ブレーキや誤発進抑制機能が働く機会はない。そのため、体感会に参加することで、改めて「スマアシ」の実力を実感するケースもあるそうだ。なるほど、確かにそうだ。


やってみよう!の精神
6万円が10万円になったら意味がない
最新の予防安全機能を誰もが使えるものにしたいという同社の姿勢は、モノ作りにおいても徹底している。
「いい品を安く提供するため、当社では昔から1円1ミリ1グラムにこだわったモノ作りを行ってきました。それを一言で表すのが『良品廉価』という考えです。『スマアシ』は2012年に5万円で登場しましたが、デバイスが格段に進化した最新の『スマアシⅢ』でも6万円に抑えています」
良品廉価の追求はチャレンジの連続だが、ダイハツにはそれを後押しする社風があるという。2012年に「ムーヴ」が軽自動車で初めてASVとして最高評価を得たことをはじめ、さまざまな「業界初」を成し遂げてきた。
「これまで、ダイハツは、新しい技術を小さく安価にすることで、軽という量販車に取り入れ、車社会に普及させる、そういう時代を先取りしたクルマづくりに取り組んできました。軽でありながら広く乗降がし易く子育て世代の支持を得たタント、CVT化やアイドリングストップ搭載など、軽自動車の進化に向き合ってきました。当社はいい意味で小さな自動車会社ですから、お客様や営業の現場と開発部門の距離が短く、意思決定が早く、『やってみよう!』というレスポンスの良さがダイハツという会社が生き残ってきた要素だと言えると思います」
ユーザーにとって本当に必要な技術を提供したいという思いの強さも、ダイハツらしさと言える。
「開発担当者が『スマアシにこんなオプションがプラスできますが、価格が10万円になります』と提案しても、『それは違う』と却下されるでしょう。大切なのは、誰もが手に入れられる価格で、その値打ちのある機能を搭載すること。予防安全機能というとマイカーを連想する方も多いと思いますが、事業用の車にもスマアシは有効です。1回の事故の修理費用は平均17万円(ダイハツ調べ)と言われていますが、『スマアシ』なら6万円。事故による休業ロスも含めた、このような経済的側面だけでなく、従業員の安全を願う事業主の思いからも今後、商用車領域でのスマアシの普及拡大も我々の重要なテーマと考えています」
「スマートアシスト」は軽自動車に限らず、ダイハツの乗用モデルのほぼ全車種に対応しており、搭載車は累計140万台を突破した。同社では、「トール」をはじめとした乗用車でも手応えを感じているという。
「普及してきたとは言え、日本国内を走る車の大半は、予防安全機能が未搭載の車です。商用車の領域も含め、普及促進に向けたダイハツの役割は大きいと再認識しています。当社の新車販売台数は年間約60万台です。その中で『スマアシ』搭載車の割合を少しでも上げることが、ドライバーだけでなく対向車や歩行者の安全安心を提供することにつながるはず。国は2020年までにASV(先進安全自動車)の割合を90%にするとしていますが、軽の量販モデルを持つダイハツの取り組みが普及促進の何らかの触媒役になればと思っています」
自動車メーカー各社が力を注ぎ、日進月歩のASV。ドライバーはもちろんのこと、対向車や歩行者を含めた、社会全体を安全に導く技術だからこそ、誰もが使える形で普及することに大きな意味がある。良品廉価を基盤としたモノ作りは、今後もダイハツの好調な成長を支えていくことだろう。
*2 一般社団法人 全国軽自動車協会連合会 平成28年12月末現在 軽四輪車保有台数と世帯当たり普及台数
*3 一般社団法人 日本自動車工業会「2015年度 軽自動車の使用実態調査報告書」

