太陽光「特需」の終焉と「中小発電」の展望 FITの下落は、発電コスト削減で吸収できる

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関東地方のある事業者は、300坪前後の土地に中規模の太陽光発電所を建設する計画を100カ所以上で進めている。この事業者に対し、インリージャパンは単に太陽光パネルなどのハードウェアを供給するだけでなく、事業計画づくりのコンサルティングからシステムの設計・施工、資金調達までトータルにサポートしている。日本における太陽光発電の普及を進めるために、単なるサプライヤーとしての太陽光パネルの供給だけではなく、顧客の太陽光発電事業を成功に導くためのトータルソリューションを提供しているというわけだ。

世界30カ所に展開するインリーソーラーグループ

インリージャパンは、中国に本社を置くインリー・グリーンエナジーホールディング(インリーHD)の日本法人。ニューヨーク証券取引所に株式を上場しているインリーHDは中国に4カ所の生産拠点を持ち、ポリシリコンからインゴット、ウエハ、太陽電池セル、モジュール組み立てまでの一貫した生産体制を構築し、世界30カ所以上に事業所を展開して「インリーソーラー」ブランドの太陽光パネルを販売している。インリージャパンは2012年の設立で、有力外資系メーカーとして着実に実績を伸ばしている。

見据えるのは、日本の太陽光発電の未来

インリージャパンの特徴は、グローバル本社から権限が委譲されていることにある。そのため、短期的な収益増を狙うだけでなく、中長期的な目線を持って、実験的なプロジェクトにも積極的に取り組んでいる。冒頭のソーラーシェアリングがいい例だ。

さらに同社は岩手県の陸前高田市と協同で、1区画300~400坪の土地10区画に低圧の太陽光発電所を建設する計画も進めている。

「昨年末から市の建設部と毎月協議の場を設けてきました。陸前高田市には津波の被害を受けて更地になったままの土地がたくさんあり、それを活用します。すでに用地の選定は終わっており、秋から工事が始まります。目指すのは電力の地産地消です。

陸前高田市では、東日本大震災で津波にさらわれた土地は現在も更地のまま。この土地を基点に、太陽光発電による電力の地産地消に取り組んでいく

現在の日本の電力供給は80%以上を火力発電で賄っています。化石燃料を外国から購入しさらにCO2を排出する火力発電ではなく、グリッド・パリティを迎えつつあるいま、各地域に平等に与えられた地域資源である太陽光を活用することが国益につながることは明らかです」

発電コストが下がったということは、事業リスクが小さくなったとも言い換えることができる。小さな投資でもリターンが見込めるとなれば、化石燃料や原子力に頼らない太陽光への関心はますます高まっていくだろう。

「自家消費案件が非常に増えてきています。今後、たとえば農業用ビニールハウスの照明や空調の電力を賄うなど、地域の需要にマッチさせたプランもあるでしょう。広い用地がある場合は、メガソーラーを建設して大電力を必要とするデータセンターを誘致することも考えられます。『自分の電気は自分でつくる』という考え方はもっと広がるでしょう。そういう意味で、太陽光が本格的に普及するのはこれからだと言えます」

このほかにも、インリージャパンは太陽光発電所に蓄電池を組み合わせ、24時間売電可能なシステムの開発をパートナー企業と共同で進めるなど、太陽光発電を電源として安定させることにより用途を拡大する取り組みも行っている。インリージャパンはさまざまな企業とタイアップし、このような太陽光発電の利活用事例を積極的に発信することにより、業界の活性化、普及の加速を後押ししていく方針だ。

メガソーラーから地域資源を活用した電力の地産地消を実現する中小規模発電所の量産へ、いま、日本の太陽光発電は新たなフェーズに入りつつある。市場の健全な活性化と発展は、むしろこれからなのかもしれない。

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インリー・グリーンエナジージャパン株式会社