太陽光「特需」の終焉と「中小発電」の展望 FITの下落は、発電コスト削減で吸収できる

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インリー・グリーンエナジージャパン
山本 譲司 社長

「バブル崩壊」の影響はまだ終わりが見えていないが、この状況について「弊社が長期的なお付き合いをさせていただいているお客様は、口をそろえて『これからが本番』と仰っています。倒産が増えているのは、市場の健全化が進んでいると捉えています」と話すのは先の山本社長。

「FITによる急速な市場の立ち上がりは、バブルというよりは『特需』と言ったほうがいいでしょう。買取単価が下げられたことで、山林を開発するコストを捻出することが困難となり、大規模メガソーラーの特需が消えたのは事実ですが、中小規模の発電所をターゲットにした発電事業者のなかには、買取価格が21円でも十分利益を出しているところはたくさんあります。『16円までならやっていける』と明言する企業も少なくありません」

買取価格が半額になっても発電事業採算が合うのは、「設備・施工コストの低下」と「発電効率の向上」という2つの要因が大きい。

裏面でも発電できる太陽光パネルも登場

実際、太陽光発電に必要な太陽光パネル価格は、メーカー各社がコストダウンに取り組んだことにより、この数年で大幅に下がっている。昨年、FITの制度変更があったためメーカー間の競争が激しくなったことで、値下げ圧力はさらに強まり、その結果、太陽光パネル価格の下落幅は3割から4割にもなった。

発電効率について、インリー・グリーンエナジーホールディングでは、商品を出すごとに性能を向上させてきた。今年の3月から販売を開始している高出力の両面発電型太陽光パネル「PANDA BIFACIALシリーズ」では、パネルの表面だけでなく裏面でも発電できることが特徴で、最大出力が従来製品の約30%増となる370ワットという性能を誇る。その発電効率のよさから、冒頭の茶畑でのプロジェクトにもこのパネルが採用される見通しだ。

PANDA BIFACIAL
前面だけでなく、背面からも太陽光を取り込み、最大30%出力アップ。N型単結晶シリコン太陽電池採用で、朝や夕方、曇りの日など、光が弱いときにも持続的にエネルギーを生み出す

太陽光パネルのみではなく、PCS(パワーコンディショナ)、架台などの設備、施工も含め、太陽光発電所をゼロから建設するコストは大幅に下落基調だ。

「ほんの1年前までは、太陽光発電所の建設コストは1キロワット当たり20万円を切ればいいと言われていましたが、今では11~14万円程度になっています。太陽光の発電コストは、すでに火力発電など既存の電力コストと同等水準に入り、当社としてはグリッド・パリティ*2にすでに到達しているという認識です」(山本社長)

*2 グリッド・パリティ=「グリッド=送電網」「パリティ=同等」。発電コストが、従来の電力コストと同等かそれ以下であること

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