日本企業は成長戦略をどう描けばよいのか?

ASEAN CONFERENCE 2017

特別講演I
【ASEANを軸としたグローバル戦略】

ASEANにおけるダイキン工業の成長戦略

冨田次郎氏/ダイキン工業 取締役兼副社長執行役員 グローバル戦略本部・生産技術担当

ダイキン工業の冨田次郎氏は、空調機売上世界ナンバー1(富士経済「グローバル家電市場総調査2017」調べ)を達成したグローバル戦略を語った。同社は、海外売上比率を2000年の24%から16年に76%に伸ばして国内と海外の比率を逆転させ、売り上げも3・8倍に拡大した。国ごとのニーズに対応する現地密着型の開発と、生産の最寄り化による供給リードタイム短縮、溶接などの技能伝承を体系化した人材育成を進めてきた。エアコン購買層が急増するアセアンでも、同様の手法が成功。2010年から16年までに売り上げを6倍以上に伸ばしたベトナムでは、高い個人向け電気料金を抑えるために省エネ性の高いインバーターエアコンを中間層も手が届く価格で提供。販売を安定させる独自の専売店網も構築した。タイの生産拠点から輸送していた商品の供給を速めるため、ハノイ新工場を建設中。設備をモジュール化し、需要変動に柔軟に対応できる生産ラインを構築するとともに、IoT活用による安定操業を目指す。工場従業員、販売店スタッフの研修センターも併設して人材育成に注力する。また、地球環境への貢献の観点から環境負荷の少ないタイプの冷媒の普及を世界中で推進。特許の無償開放のほか、各国政府等へのロビー活動にも積極的に取り組み「これからも地球にやさしいモノづくりをリードして、アセアンの成長に貢献したい」と語った。

基調講演II
【地域統括、ガバナンス】

地域統括会社による「攻め」のガバナンス構築

吉本諭治氏/KPMG シンガポールディレクター

KPMGの吉本諭治氏は、日系企業の地域統括会社の課題を紹介した。急成長するアセアンは、困難さを増す中国の事業環境や、拡大する現地消費市場を背景に、その重要性が高まっている。その中で、アセアン地域統括の役割は、域内グループ会社のガバナンス強化から、M&Aや合弁事業の事業統合や、新規事業立ち上げ等の成長への直接貢献、ローカル人材育成に変化。役割と権限を整合させるため、戦略に応じて本社、地域、各国をバランスさせた意志決定機能の前線化・最適化を進めることを提案した。また、デジタル戦略については、人件費が安いアセアンでは、コスト削減を目的とするのではなく、たとえば、業務品質向上や不正行為防止のための自動化推進、小売業への参入規制下でエンドユーザにリーチするためのツール導入が有効と指摘。イノベーション創出には、シンガポールのスタートアップ企業群のテクノロジーを活用する可能性に言及した。人材育成については、日本企業では、ローカル人材は頑張っても経営層に入れないという認識が強く、評価や昇進もあいまいと見られている結果、優秀な人材を確保し続けることが難しい現状を指摘。人材プールの見える化、世界共通のジョブディスクリプション(人材要件定義)の策定、キャリアパスの明示などの必要性を強調。「まず、日本以外の国で世界共通のタレントマネジメントを実践すべき」と訴えた。

特別講演II
【現地マネジメント、ビジネスの創造】

長瀬産業のASEAN戦略
―変革、成長、そして飛躍へ

佐藤幸平氏/長瀬産業 取締役兼執行役員海外担当

長瀬産業の佐藤幸平氏は、グループのアセアン地域における基本的な戦略について説明した。同社は、1832年創業の化学系専門商社として発展、製造・加工や研究開発機能を付加し、現在は、投資・研究・商社・製造・海外・物流の6機能を生かした「ビジネスデザイナー」として、新たな価値提供を行っている。アセアンでも、これら6機能を生かし、ビジネスやエリアの拡大を推進。グローバルネットワークを生かし、日本から輸出していた化学品の供給源を中印韓台も含めて多様化。インドにラボを設けて、機能性材料を用いた塗料の配合処方を現地ニーズに合わせて開発。インドネシアでは、当社グループ製造会社の林原が量産化した機能性食品素材・トレハロースを使った、現地向けの食品レシピ、試作品作り。フィリピンでは、当社グループの販売現地法人がバッジ型の放射線測定器を使い、病院の放射線検査技師の被ばく量測定サービスを提供している。今後は、地域統括組織の設立を検討し、管理業務の標準化、現地スタッフの育成、本社社長らが現地訪問してビジョンなどの浸透を図るなどマインドセットの徹底を進めながら「アセアン地域が主体性を持った新規事業を創出し、アセアンのビジネスデザイナーになることを目指したい」と語った。

次ページASEAN現地マネジメントの事例
お問い合わせ
KPMG/あずさ監査法人