グループ内外との連携で農業に新しい価値を
女性営業担当が伝える農業ICTの可能性
NTTドコモ
スマートフォン(スマホ)やタブレットを使った手軽な手法で、地方創生に取り組む。

中央:第一法人営業部 農業ICT推進プロジェクトチーム アグリガール026 横田明音
右:第一法人営業部 農業ICT推進プロジェクトチーム アグリガール002 有本香織
モバイル端末で手軽に効果を実感
通信事業者のNTTドコモは、農業ICT推進のためプロジェクトを発足。女性営業担当チーム「アグリガール」が中心となり、身近になったスマホやタブレットで、手軽に取り組めるサービスを提供し、農家の支持を広げている。
アグリガールは、JAグループなどを通じて生産者にモバイル端末を提案する女性営業担当が任意で集まり活動をスタート。屋外作業が多い農業に適したモバイル機器によるデータ通信で、農作業を効率化するサービスを提供してきた。結成当初からのメンバーである有本香織氏は、「当社がこれまで築いてきた地域の営業力を生かし、ICTで農業が変わることを伝えたい。そのためには手軽に始められ、効果が実感できることが重要です」と話す。
畜産に具体例がある。農業ICT推進プロジェクトで、2014年からJAグループの販売網を使って販売を始めた「モバイル牛温恵」だ。温度センサーで母牛の体温をチェックして出産の兆候を感知、スマホなどに電子メールで知らせる。農家にとって重大な経済的損失となる出産時の子牛の死亡事故を大幅に減らし、畜産農家が子牛の出産に立ち会う時間も大幅に短くなった。
大分県のベンチャー、リモートが開発した分娩監視システムとNTTドコモのモバイル通信網の活用により実現したこのサービスでは、農家の問い合わせに24時間対応するコールセンターも整備、サポートをより手厚いものにしている。アグリガール011の佐藤志保氏は、「牛の出産では人の介助が必要となることもありますが、夜中も含めて長時間牛舎に詰めて見守るのは大変です。このサービスで負担が減らせると評価をいただいています」と説明する。販売は飼料などを売るJAグループの商流に乗せ、さらにデモ機を活用した営業活動をNTTドコモのアグリガールを含めた全国の営業体制で行った結果、1000件以上の販売実績につながっている。
農家・自治体・農水省と地方創生

教育と農業のコラボにも注目すべき動きがある。新潟県新潟市では、味方小学校の児童を対象にした食育の一環として農業体験学習を実施。その実習田に、ベジタリアが開発した水稲向け水管理支援システム「PaddyWatch」を設置し、データをドコモの通信網を通じて収集、水田の水位、水温、湿度などの変化をいつでもどこでも確認できるようにした。アグリガール026の橫田明音氏は、「農業体験は、田植えや稲刈りなど、ピンポイントの体験になりがちですが、水田の様子を継続的に見守ることで、農家さんの苦労を学ぶ大切な機会になっています」と、その意義を強調する。
現在、アグリガールは全国で90人が活動。農水省の「農業女子プロジェクト」のメンバーをはじめ、生産に関わる全国の女性と連携を深めている。有本氏は「アグリガールの活動を通して多くの農家の方と情報交換ができるようになりました。地方創生の足掛かりとして、農業ICTに大きな可能性を感じています」と、手応えを語る。