転勤・職務転換なし「限定正社員」は広がるか 働き方の多様性につながる制度ではあるが…

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「ジョブ型正社員制度を導入する場合、まず、限定する職務内容が明示されることが必要です(労働条件の明示)。次に、正社員と賃金水準や昇進などの処遇で差を設けることが予想されますが、その差は限定した職務内容に応じた合理的なものであることが必要です。

職務内容によって賃金水準などの処遇に差を設けること自体は法律上の問題はありませんが、ジョブ型正社員であるというだけで賃金を低くすることは不合理な差別になり許されません」

「ジョブ型正社員」から「正社員」への転換は?

ジョブ型正社員から正社員、あるいはその逆など、途中で転換することは認められるのだろうか。

「転換制度は必要です。労働者のニーズに合わせた働き方が目的ですから、ジョブ型正社員となった後も、必要に応じて正社員になる道が残されるべきです。

転換制度では、特に正社員からジョブ型正社員への転換が問題となります。この場合、ジョブ型正社員への転換に伴い、賃金の引き下げ等労働条件の不利益変更をされることが予想されます。労働者の同意なしにこうした転換は許されないとするべきです」

この他、何か懸念される点はないだろうか。

「最も懸念されるケースとしてジョブ型正社員を整理解雇の対象とする場合が考えられます。

処遇面で述べたとおり、整理解雇の場面でもジョブ型正社員であるというだけで優先的に解雇することは決して許されません。ジョブ型正社員も整理解雇の有効要件を満たすかどうか、正社員と同様に検討されるべきです。総じて、ジョブ型正社員という名前で労働条件を曖昧にしたり、差別することを防止することが課題となると思います」

野澤 裕昭(のざわ・ひろあき)弁護士

1954年、北海道生まれ。1987年に弁護士登録。東京を拠点に活動。取扱い案件は、民事事件一般、労働事件、相続・離婚等家事事件、刑事事件など。迅速かつ正確、ていねいをモットーとしている。趣味は映画、美術鑑賞、ゴルフなど。
事務所名:旬報法律事務所 

 

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