日本全体のために必要な沖縄の潜在可能性
1972年の本土復帰直後、沖縄を訪れる国内外からの観光客は年間40~50万人程度だったが、今や870万人を超え、しかも増加傾向が続いている。「沖縄が人々を引き付ける力は何かと考えたとき、それは沖縄の歴史や風土、文化などの『ソフトパワー』が、人々に求められるようになってきているのではないかと思いました」と、富川氏は指摘する。
日々、競争社会を生き抜いている現代人にとって、どうしても必要なのが心身のリフレッシュである。そうした視点で見たとき、沖縄にはそのニーズに応える魅力があり、しかも、そのニーズは国が発展すればするほど求められるようになり、沖縄にそれに応える素地があると富川氏は言う。
「海に囲まれた沖縄には、ハピネスやウェルネスはいつも水平線の彼方から来ました。ですから、来るものを拒まない、いつでも歓迎する『ALWAYS WELCOME』の文化がコアにあるのです。それは、なにより人間を肯定する文化であり、極端に言えば、どんなにのんびりした人でも生きていける社会というのが沖縄の魅力でもあると思うのです」。
そんな独自の文化を育んできた沖縄は、人口が143万人を超えて今も増加し、日銀の短観でも全国を凌駕している。また県民総生産も増加傾向にあって、一人当たりの県民所得にも好転の兆しが見えている。「今や、地銀も沖縄に入ってきて支所を構えてアジア展開の足場を固めたり、独自の技術を持った企業が、台湾や中国に目を向けながらコールドチェーンなどを展開しようとしたりしています」。
つまり、失われた20年を経験し、人口減少に突入した日本経済の再生を考えたとき、沖縄の潜在可能性が顕在化すれば、その再生に役立つのではないかと富川氏は話す。さらに、時流も沖縄に味方をして、アジアの橋頭堡としての役割も出てきたのではないかというのだ。
懐の深い沖縄の文化
沖縄の今を象徴する興味深い事例があると富川氏は言う。外資が沖縄にラグジュアリーなホテルを作るのは利益が上がるからだが、あるラグジュアリーホテルは、これまでのビーチサイドという定番ではなく、あえて海が見えない、昔からの風情がある平和通り近くの立地を選んだという。「その意味をわれわれは、近くに市場があって新鮮な魚介類が食べられ、アジアからのお客様がナイトバザーを安全に散策でき、繁華街に行けばメイドインジャパンの商品が買えるという、ソフトパワーによるものだと理解しています」。
富川氏自身、沖縄で生まれ、大学院で勉強した数年間を除けば、沖縄で過ごしてきた。そうした中で、かつては沖縄が東京などに比べて劣っているのではないかと感じた時期もあったという。それが成人するにつれて、文化に優劣などはなく、人間が根源的に求めるものが沖縄にはあるのではないかと思うようになったと話す。そんな思いで足元を見直してみると、沖縄には心地よい素材がたくさんあることに気づいたというのだ。
中でも沖縄が誇りたい文化の最たるものが「ALWAYS WELCOME」で、その昔天然痘が蔓延したときも、なんと天然痘を褒め称える歌を三線で作って、さりげなく出て行ってもらったのだという。「私は、そんな沖縄の文化に誇らしい気持ちがあるのです。疫病でさえもWELCOMEで、そっと出て行ってもらう。そういう人間が地球上に存在するのだと」
また沖縄県は、島言葉や方言を大切にすることにも注力している。「沖縄の言葉を媒体にしないと、伝達できないような文化があるのです。なくしてはいけない沖縄の文化を保持するためにも、島言葉を守っていく意味があるとわれわれは考えています」。
観光もビジネスチャンスも優位な要素を具備
沖縄では今、「アジア経済戦略構想」が推進されている。国内市場に依存しているだけでは縮小を余儀なくされる日本経済は、成長著しいアジアをはじめ海外に市場を求めて展開しなければならないことから、沖縄もいずれ到来する人口減少に対応して発展するため、戦略を示そうというのだ。
「特にアウトバウンドの拠点を作るための戦略を議論するなかで、いくつかのポイントが見えてきました。たとえば、生鮮食料品を中国などのビッグマーケットに展開しようと思ったとき、一番大きなメリットはメイドインジャパンの信頼なのです。そこで沖縄を空輸の拠点にすれば、アジア各地に最も早く届けられますから鮮度が保たれ、しかもメイドインジャパンが付されるのです」。それらを視野に、沖縄県は中国の福建省と覚書(MOU)を結ぶなどしているが、中国に定期的に入れれば、陸続きの中央アジアを含む新たなマーケットも見えてくる。
このように、経済的なポテンシャルやソフトパワーという優位な要素を備える沖縄は、もはや日本の端にある島ではなく、アジアの中心としての存在感を増そうとしているのである。そして、沖縄は日本が再生するための多様な実証トライアルができる、フロンティアとしての役割も果たせるのではないかというのだ。
富川氏は言う。「沖縄の位置づけは、日本にとってアジアを含めて世界展開するときの『ジャンプ台』ととらえていただきたいと考えています。那覇空港に第2滑走路ができるなど空路も開けてきますから、観光面だけでなくMICEも盛んになりますし、ビジネスチャンスも増えてきます。ぜひ、2度3度と沖縄を訪れてその多彩な魅力をつぶさにご覧いただきたいと思います。われわれは『ALWAYS WELCOME』です」。
心身を癒やされたいと思う人にも、ずっと住みたいと思う人にも、ビジネスをしたいと思う人にも、WELCOMEの沖縄。その本当の魅力は、やはりそこに飛び込んでみなければ分からないのである。