有料会員登録 東洋経済オンラインとは

Galaxy、V字回復への勝算

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
サムスン電子のスマートフォン、Galaxyの最新機種が6月に日本で発売された。日本に先駆けて発売されている地域では、3週間で1000万台の出荷台数を記録した驚異的な機種だけに関係者の期待も高い。焼損事故からの復活、そして日本市場でプレゼンスを高めることはできるのか。

3週間で1000万台、欧米やアジアで好調

ソウル市内から、車に揺られて約1時間。ユネスコ世界文化遺産の「水原華城」で知られる水原市に、サムスン電子の本社がある。敷地の入口からモバイル事業部のある建物までは、徒歩だと15分ほどと敷地面積は広大だ。この地を中心とした一帯はまさに同社の城下町といったにぎわいを見せていた。

サムスン電子のモバイル事業部ビル

モバイル事業部に着くなり、同社の担当者が取り出したのが、最新のフラッグシップモデル「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」だ。目玉となるのが、従来のスマホから比率を大きく変えたディスプレー。縦に長いため、S8が5.8インチ、S8+が6.2インチと、従来のSシリーズ(S7 edgeは5.5インチ)よりインチ数では大きくなるが、横幅がスリムで片手でも持ちやすい。ディスプレーの左右を湾曲させ、上下のベゼル(縁)も細くなっているため、あたかも映像が浮き出しているように見えるのが特徴だ。

「Galaxy」あるいは「サムスン」と聞くと、2016年に海外市場で起きた焼損事故や、それに伴う大規模リコールを思い出す向きもあるかもしれない。バッテリーのショートが原因で、当時の最新モデルであった「Galaxy Note7」の一部が焼損。その不良率が通常より1ケタ高い0.0014%ほどだったことから、同社は販売した製品の回収に追われた。Noteシリーズは同社が16年の冬商戦を戦うためのフラッグシップモデルで、販売台数も期待されていただけに、サムスン電子に与えた影響も大きかった。結果として、同社はこの穴を埋めることができず、16年第4四半期の出荷台数におけるグローバルのメーカー別シェアでは僅差ながら2位に陥落した

*出所:Gartner

グローバル商品企画グループ
ヤン・ヒョンヨン

一方で、同社はこの事故の反省を踏まえ、通常より大幅に厳しいバッテリー検査を実施していくと発表。X線検査を含めた8段階の試験を行い、安全性には万全を期す構えだ。サムスン電子グローバル商品企画グループのヤン・ヒョンヨン氏によると、S8、S8+も「(Note7 の)問題を分析したうえで、設計面で同じことが起きないようにしている」と語りながら、「安全に使っていただける」と自信を見せる。

世界中の消費者も、この対応に納得したのだろう。Note7 を手にできなかった消費者の期待感もあって、S8、S8+は、歴代最高のスタートダッシュを切った。出荷台数はわずか3週間で1000万台を突破。おひざ元である韓国はもちろん、Galaxy人気の高かった欧米やアジアでも順調な出足だという。

Galaxy S8
  • カラー:オーキッドグレー、ミッドナイトブラック、コーラルブルー(S8+はミッドナイトブラック、アークティックシルバー)
  • ディスプレー:約5.8インチ(S8+は約6.2インチ)
  • サイズ:約149×約68×約8.0(S8+は約160×約73×約8.1)
  • メインカメラ:約1220万画素 最大F値:1.7

今後の業界標準となる縦長ディスプレー搭載

では、S8、S8+の魅力はどこにあるのか。

グローバル商品企画グループ
チェ・スンミン

1つは、先に挙げたディスプレーだ。通常のスマホはテレビと同じ16対9が一般的だが、S8、S8+は18.5対9とより縦が長い。比率を変えたのは、「ブラウザやSNS、メッセンジャーなど、スマホはリストビュー(縦表示)型のアプリが多い」(グローバル商品企画グループのチェ・スンミン氏)ためだ。縦に長くなれば、そのぶん画面に収まる情報量も増え、一覧性がアップする。ハリウッド映画をはじめとして、21対9のコンテンツが増えているのも、18.5対9のディスプレーを採用したもう1つの理由だ。「18.5対9は、テレビなどの16対9と、映画の21対9を両立できる比率。映画などのコンテンツが、より見やすくなる」(チェ氏)。

実は、同時期にはライバルメーカーも2対1のディスプレーを搭載したスマホを発表し、縦長ディスプレーは、今後業界標準になっていくと考えられている。この流れに、サムスンがいち早く乗れたのはなぜか。答えは、サムスン電子が総合家電メーカーであり、部材まで自前で生産しているところにある。ディスプレーの開発は、企画側から要求を出し「比率を定め、(グループ内の)ベンダーに発注して作り上げた」(チェ氏)という。サムスンは、今後、このディスプレーがスマホ業界のトレンドとなると見ており、「他のメーカーも追随してくる」(チェ氏)と予想する。

製品デザイン1グループ
キム・ユンジン

デザインチームも、このディスプレーに合わせ、「ディスプレー機器という”スマホの本質”に近づけるよう努力した」(製品デザイン1グループのキム・ユンジン氏)。通常のスマホは、ディスプレー側に近接センサーやスピーカーなどが配置され、それが目立っているが、S8、S8+では「視覚の邪魔にならないよう、額縁を黒にし、インカメラのレンズも反射防止のコーティングをして、最大限それが隠れるよう配慮した」(キム氏)。前から見ると、ディスプレー以外が目に入らないのは、そのためだ。さらに、これまでGalaxyシリーズの特徴であった、画面下のホームボタンまでもなくしている。「当社でもいちばん悩んだポイントだった」(チェ氏)が、未来的なデザインを貫いた。

機能面では、「自分撮り」をするためのインカメラも強化。「画素数を800万、開放F値を1.7まで上げ、オートフォーカスも搭載しています。顔認識で素早く、キレイな写真を撮ることができる」(キム氏)。さらに、スマートフォンの新しいインターフェース「Bixby」も搭載する。現在、音声コマンドで操作できる言語は韓国語のみだが、利用者の行動や時間などの情報に基づき、さまざまな情報をオススメする機能は、日本語でも利用できる。

スマホのグローバル市場で圧倒的な存在感を放つサムスン電子。他社製品にはない最先端の機能をいち早く盛り込み、「革新的でチャレンジャーという評価をいただいてきた」(キム氏)。黒が締まってクッキリと写り、色も鮮やかなディスプレーや、処理能力の高いCPUに加え、利用者のかゆいところに手が届く機能も人気を博している理由だ。S8、S8+では、スマホの基幹部品であるディスプレーにも手を入れ、その評価をさらに高めることになりそうだ。すでに海外で発売開始から数週間で好調な売れ行きを示しているのも、それを証明する。

日本独自モデルGalaxy Feel

国や地域の文化に合わせて、細かなカスタマイズを施す方針も、シェアを高めることに貢献している。日本では、ドコモの夏モデルとして、S8、S8+に加えて、日本独自モデル「Galaxy Feel」を発売する。

Feelは、「日本のお客様が喜ぶスマホとは何か」(サムスン電子ジャパン・プロダクトグループの林美香氏)を徹底的に追求したモデル。日本で重視される片手での操作性を考慮して、横幅を67ミリ(S8は68ミリ)に抑えつつ、バッテリーも大容量化して、最大で7日間の連続利用時間*を達成した。女性向けのカラーとしてピンクを採用したが、これも「日本向けに調査をし、いくつもの試作を重ねた結果」(同・猪股裕行氏)という。

*長時間の通話・動画視聴、また大量ダウンロードなどをする 場合にはこの時間を下回る場合があります

Galaxy Feel
カラー:オパール ピンク、ムーン ホワイト、インディゴ ブラック
ディスプレー:約4.7インチ 
サイズ:約138×約67×約8.3
メインカメラ:約1600万画素
最大F値:1.9
ウェアラブルBizグループ
(Gear VR担当)
キム・ミンギュ

サムスンは、Galaxyを中心に据えながら、周辺分野の開拓にも余念がない。中でも力を入れているのは、仮想現実(VR)だ。Galaxyのスマホをはめたうえで頭に装着する「Galaxy Gear VR」はすでに5代目となり、S8、S8+に合わせて、コントローラーが付属した新モデルを発売した。コントローラーによって、「首を動かさなくてもポインターで操作できる」(ウェアラブルBizグループのキム・ミンギュ氏)と、操作性がさらに高まった格好だ。

Galaxy Gear 360(左)は、Galaxy Gear VR with Controller(右)で視聴できる360°のVR映像が撮影可能。撮影しながらリアルタイムでシェアもできる

Galaxy GearVRが仮想現実を見るためのツールなら、「Galaxy Gear 360」はそのコンテンツを作るためのツールだ。Gear 360とは、撮影者の周囲を丸ごと記録できる360度カメラのこと。新モデルはより低価格にして、利用者が手に取りやすくしたうえで、ライバル製品でも使えるよう、互換性を拡大している。撮った写真はSNSなどを通じて、他の利用者とシェアすることも可能。つまり、Galaxyを軸に、コンテンツを作るところから見るところまで、ワンストップでVRのツールを提供するというのがサムスンの戦略だ。

海外では、歴代最高の販売実績を更新しているS8、S8+だが、日本ではドコモとauから6月に発売されたばかり。成熟化しつつあると同時に、画一化しているスマホ業界にも、一石を投じる1台になりえるか。成否がわかるのはこれからだ。