短納期・低コスト・高品質を実現する
「システム建築事業を展開する当社は、そのブランド名である『yess建築』を採用いただくことで、お客様のビジネスの持続的な成長に貢献できると考えています」
こう語るのは、2016年6月に横河システム建築のトップに就任した大島輝彦社長。「システム建築」のリーディングカンパニーである横河システム建築は、鋼製橋梁大手の横河ブリッジなどを事業会社として有する、横河ブリッジホールディングスの一員。89年に横河ブリッジ内に、橋梁、鉄骨に次ぐ第三の事業としてシステム建築事業部が発足し、01年8月に独立してできた会社が横河システム建築だ。
システム建築は、鉄骨、屋根、外壁、建具などの部材を標準化することにより、高品質の建物が短工期、低コストで建築できるのが大きな特長だ。同社は「yess建築(Yokogawa Engineered Structure System:イエス建築)」を武器に、業界を牽引している。設計の自由度も高く、「yess建築」なら1ミリピッチで、スパン、間柱、桁行(建物の長さ)、軒高などを設定でき、要望に応じ、クレーンの設置も可能という。
「yess建築」が誕生し30年近くになるが、この間、横河システム建築は着実に実績を積み重ねてきた。「yess建築」で建築された建物は全国に約7700棟に及ぶ。
「一度『yess建築』で建築いただくと、増築や2棟目、3棟目も『yess建築』を採用いただくリピーターのお客様が多いです。納期、コストなどのご要望に柔軟に対応してきたことが評価につながっていると自負しています」と大島社長は胸を張る。
2 御殿場高原 時之栖 体育館(静岡県御殿場市)
3 姫路大津ヒルズ サンドラッグ(兵庫県姫路市)
4 JA全農 ふくしまの米会津広域連合集出荷施設『美米蔵』(福島県大沼郡)
5 ナガイ 飯田物流センター(長野県飯田市)
6 那須りんどう湖レイクビュー那須の恵み Mekke!(栃木県那須郡)
工場・倉庫だけでなく、6の「那須りんどう湖レイクビュー 那須の恵み Mekke!」のように商業施設に使われることも。使い勝手の良さから、使用用途にも広がりが出てきている
30~40%の軽量化や2割の納期短縮も可能
システム建築のメリットが知られるようになり、工場、倉庫などで同工法が選ばれる機会は年々増えている。その中で、横河システム建築の「yess建築」が高いシェアを誇る理由はどこにあるのか。

「当社ならではの製造・販売・施工の仕組みには自信を持っています」と大島社長は語る。
製造のカギを握るのが、千葉県袖ヶ浦市にある同社のシステム建築専用となる千葉工場だ。7万8000平方メートルもの広大な敷地で、鋼材の調達から設計、加工、輸送までを一貫して行っている。高付加価値の独自部材もこの工場から生まれている。たとえば柱や梁に使用する同社の「ビルドH鋼」は、高張力鋼材を使用し自社で切断・溶接することで、力のかかる部分は太く、かからない部分は細くなっている。このため、規格品のH形鋼と比較し30~40%も軽量化でき、最大60メートルものスパンにも対応できるという。
さらに、専用工場だけに、大量のフレームを短期間で加工できるのが特長だ。また、常時2~3カ月の材料をストックしており、材料手配の時間も短縮できる。在庫は時にリスクにもなるが、高いシェアを維持する同社にとっては、強みとして力を発揮する。専用の自社工場を持っているのは、業界では同社だけだ。同社が持つ特徴は商品の質にとどまらない。
「販売・施工では、当社独自の『ビルダー』と呼ぶ地域の建設会社のネットワークに強みがあります」(大島社長)
全国900社ものビルダーは、地域の顧客企業と長年にわたる信頼関係を築いており、ニーズも熟知している。また、ビルダーが共同運営するインターネットサイト「yessビルダーズネット」では、施工事例などを含むさまざまな情報提供を行っている。一方、横河システム建築はこれらのビルダーに向けてきめ細かなサービスを提供している。同社の「yess見積3D」を使えば短時間で積算や見積書の作成ができ、さらにフレーミング(骨組)プラン図の作成も可能だ。人材をはじめ経営リソースに限りがあるビルダーの提案力アップにつながっている。多くの業務を標準化することで、短納期を実現しているのも特長だ。
「契約後45日~60日で建物の建設を開始できます。1000平方メートルほどの倉庫で、在来工法では基本計画から上屋工事竣工まで約215日かかる場合、『yess建築』ならこれを165日に抑えることができます」(大島社長)

ライブ施設に体育館も ますます広がる用途
設備投資ニーズはインバウンド需要やeコマースの成長と相まって加速し、それらも「yess建築」は追い風としている。また、物流施設や倉庫だけでなく、ここ数年では新しい需要も掘り起こしているという。
「商業施設・店舗やライブシアター、スポーツ施設・体育館などでも『yess建築』が選ばれる例が増えています。たとえば、4000平方メートル級の大空間を生かした、3000人収容できるアリーナなどもあります。また、柱が軽量であるため、自重が小さく、地震に強いのも大きな特長です。そのため、公的な施設や学校体育館などでも採用されています」(大島社長)

近年は、道路の陥没事故や工場火災など、社会インフラの老朽化による事故が発生し、改修・改築が急務になっている。その一方で、これらに対応する建設コストの上昇とともに、鉄筋工や型枠工などの専門工の不足に頭を抱えている現場も多い。
「『yess建築』であれば、積算・設計から現場施工、さらにはアフターサービスまでの業務プロセスを標準化しているため、熟練工を必要とする場面は多くありません。そのため、大幅な省力化が可能です。また、100社以上の現場施工会社(エレクター)網を構築していますので、施工面でもご安心いただけます」と大島社長は語る。さまざまな需要に対応できるからこそ、「yess建築」が伸びているのだ。
建物の質だけでなく、周辺サービスでも横河システム建築は高い技術力を持っている。たとえば、「YMA(Yokogawa Movable Architecture System:可動建築システム)」は、開閉式屋根を中心とした可動構造を実現する高度な特殊建築技術で、大型スタジアム、プールシステム、塗装移動上屋などで採用されている。
また、最大幅48メートル×高さ16メートルもの大開口を実現する大型自動開閉扉「タイタンドア」などもある。造船工場や、航空機格納庫、大型特殊製品の製造工場・塗装ヤードなどでニーズがあるという。同社ではこのほか、建物の屋根などを利用した太陽光発電システムの設置などにも古い歴史を持つ。「yess建築」の建物と「YMA」の可動屋根に、さらに太陽光発電システムを組み合わせるといった複合的な提案も得意分野だ。
yess建築が目指すのは”事実上の標準”
今後、建築市場が大きく拡大することは望めないものの、老朽化設備の更新や生産性の合理化による工場の建て替え需要や消費行動の多様化による物流の変化に対応した倉庫の需要は堅調に推移すると考えられている。一方、少子高齢化や後継者不在により職人不足は解消されず、在来工法の供給能力が縮小されるため、熟練の技に頼らなくても質の高い建物を短工期で建てられるシステム建築への注目が高まるのは必然だ。
大島 輝彦
おおしま てるひこ
1981年に横河橋梁製作所(現横河ブリッジ)に入社後、システム建築事業部袖ケ浦工場長などを経て、02年横河システム建築へ転籍。05年取締役、10年常務取締役、16年6月より現職。東京理科大学卒
「大都市のみならず、地方都市の活性化は日本全体の成長にとって重要です。当社は全国のビルダーやエレクターの皆様と連携し、短納期・低コスト・高品質な建物を提供することで、その実現に貢献していきます。また、当社の仕組みやサービスをさらに進化させ、『yess建築』が鉄骨造の工場・倉庫の建築においてデファクトスタンダード(事実上の標準)になることを目指します」と大島社長は力を込める。
関係各社と信頼関係を築き、チームで施主の要望に応える。横河システム建築は「チーム力」を武器に、さらなるシェア獲得を目指していく。