オリックスの航空機リース事業、強さのワケ 世界経済が減速する中でも安定成長を維持

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航空機リースは高度なファイナンス技術や各国の法律知識が必要であるため、海外の弁護士や会計士、税理士、それに航空機の状態を検査する整備士といったプロフェッショナルを自社で確保しなければならない。また世界の航空会社や投資家を相手にするには、時差の関係上、アジアとアメリカの真ん中に位置するダブリンが最も適した地となっているのだ。

「つねに国際情勢や金融市場の動向、さらに業界情報を鑑みながら、仕事をしなければなりません。難易度は高いですが、非常にチャレンジングでエキサイティングな仕事です」

小野氏もここ2カ月でダブリンのほか、ドイツ、インドネシア、香港と海外出張を重ねるスケジュールをこなしている。

トムソン航空(英国)にリース中のボーイング787型機

資産運用の一環として、成長産業である航空機リースに投資する投資家の数は年々増加している。航空機メーカーの市場シェアは、ボーイング、エアバスという2強がほぼ独占しているが、裏を返せば、航空機の供給量はこの2強の生産能力とほぼ同義だ。その一方で、グローバル化の拡大によって航空機の需要は伸び続けており、供給不足が続いている。2015年末のボーイングとエアバスの受注残は合計12万機超と過去最大を記録し、今後30年間で旅客機の新造需要は3万機以上、500兆円規模になると予想されている(「業界地図2017年版」調べ)。

オリックスはこのような航空機市場に早くから着目し、航空機を自社で購入することで、世界中のエアラインにリースを行っている。実際の事業としては、オリックスのようなリース会社が機体を購入し、航空会社へリースする取り組みだけだと思われがちだが、実はそれだけではない。

航空マーケットを的確に把握・分析し、採るべき戦略の策定、その戦略に基づくポートフォリオ管理、保有するリース機の売却活動、リース契約管理、リース機の延長・売却に伴うマーケティング、実地検査など実に幅広い業務が存在する。

豊富な経験とそれに裏打ちされたノウハウ。世界規模で人の移動がますます増加している今後のマーケットにおいても、オリックスは事業拡大に揺るぎない自信を見せている。

実務は地味なことも多い
それでも泥臭く地道に努力できるかどうか

「『あなただから決めたのです』と言われることほど、うれしいことはありません」

輸送機器事業本部
航空事業グループ
ヴァイスプレジデント
北山大佑

そう笑顔で語るのが小野氏と同じく航空事業グループでヴァイスプレジデントの肩書きを持つ北山大佑氏だ。大学卒業後、約1年間大手物流会社に勤務した後、オリックスに転職した。北九州支店で法人営業を5年半ほど担当した後、2013年に志願して航空機リース部門に配属された。配属後は先輩の指導のもと、契約書の英訳から始まり、航空機リースの管理事務、そして航空機投資の提案と自身の仕事の幅を拡げていった。現在は航空機リースに投資する国内投資家の開拓営業をメインに行っている。

「航空機リース投資は最低でも数十億円かかる高額な取引です。それだけに投資家の皆さまから信頼を得ることができなければビジネスは成立しません。そのため実際の投資実行にいたるまでには細心の注意を払っています。特に投資家の皆さまのリクエストに確実に応えるために、海外とコンタクトする場合は、英語のニュアンスの違いなどをしつこいくらいに確認するなど綿密なコミュニケーションを図っています」(北山氏)

航空機リース事業はオリックス社内でも人気のある部門の一つだ。北山氏も入社時から海外での仕事を目指し、配属に当たって社内の「キャリアチャレンジ制度」を利用した。この制度は配属された部署で2年以上経験を積んだ社員が対象で、これまで志を高く持つ多くの社員たちが利用してきた。この制度に新卒、中途の区別はない。北山氏も今、各国のエアラインへの訪問や1,000人規模の参加者が集まる航空業界のカンファレンスへの出席などの海外出張もこなしながら、やりがい溢れる毎日を送っている。

「投資家の皆さまには投資のメリットだけではなく、リスクも必ず伝えなければなりません。一方で、エアラインに対しては投資家と取引するメリットを十分に伝えなければなりません。これまで支店での法人営業で培った経験が大きく役立っています」(北山氏)

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