グローバル経営支援セミナー 南アフリカ編 最後の新興市場、南アフリカ経済の最新事情と市場ポテンシャル
【講演Ⅲ】
「南アフリカ工場運営の課題と対応」
南アフリカで工場運営を経験した日本ガイシの柴田稔氏は、現地従業員の印象について「前向きで、競争意識も高く、成長のための大事な要素はある」と話す。一方、労務、コスト、インフラ面で留意すべき課題も残る。
労務面では、違法スト防止のために全員朝礼など、普段からコミュニケーションを密にし、スト下でも出荷可能な在庫の保持を検討する必要もある。また、会社の方針を伝える管理層育成の重要性も指摘。コスト意識の定着には、目的・意義を明確に示し、成果のフィードバックを行ってモチベーションを高める工夫もいるという。インフラの不安定さをカバーするため、停電や電圧変動による設備ダウンからの復旧のマニュアル化、ガス供給元の複数化なども行った。柴田氏は「トップは、公平な議論、人事施策を行い、身近な人格者になることが求められる」と語った。
「南アフリカでのビジネス展開の実際」
1996年に南アフリカに進出した、塩ビ安定剤などの特殊化学品・添加剤メーカー、サンエースの佐々木亮氏は「需要はまだ大きくはないが、着実に伸びており、競合も少ない」とアフリカ市場の魅力を指摘する。
流通網が未整備のため、物流コストが高く、アジアと比べて人件費も割高といった課題はあるが、GDP、人口が急速に伸びるサブサハラ市場に展開するうえで、南アフリカは格好の拠点と言える。現地企業は、欧州やインド志向が強く、価格競争重視のアプローチが多い中で、同社はコストパフォーマンスを追求し、顧客ニーズに合ったテーラーメード製品投入で成功。環境意識が高い欧州を向いた顧客からは最先端技術商品へのニーズもあるという。佐々木氏は「緻密なマーケティングで価格以外の差別化も可能。適切な地元パートナーを選ぶことが重要だと思う」と自らの経験を振り返った。