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食品業界の小売・卸・メーカーが挑む ロジスティクス高度化の今

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
「食品ロジスティクス4.0 食品業界の小売・卸・メーカーが挑む ロジスティクス高度化の今」が10月18日、東京・中央区で開催された。セミナーでは、世界で勃興しつつあるインダストリー4.0をめぐる食品流通の最新トレンドの動き、そして、少子高齢化による今後の食品物流の課題や対応策について、国内外の事情に詳しい物流専門家、各企業の担当責任者らによって、事例などが報告された。
共催:野村総合研究所、東洋経済新報社
協賛:野村不動産

開会の挨拶

野村不動産
執行役員
都市開発事業本部
物流施設事業部賃貸住宅・ホテル事業部担当
塚崎敏英氏

現在、ロジスティクスを取り巻く環境が激しく変化している。これまで小売りや卸、メーカーが培ってきた歴史的な食品物流のあり方が、少子高齢化に伴い大きな変革の時期を迎えているからだ。実際、塚崎敏英氏は「ロジスティクスの再構築は今後の企業戦略の成否そのものにかかわってくる」と指摘。多くの企業にとって、ロジスティクスの再構築こそ、経営課題として取り組むべき最優先事項だと訴えた。

論点整理
「食品流通・物流高度化の新しい動き」

野村総合研究所
産業ITイノベーション事業本部
主席研究員
藤野直明氏

では、食品物流の世界は実際にどのように変化しているのだろうか。藤野直明氏は、まず食品流通・物流高度化の新しい動きについて、「食品流通・物流は新しい時代を迎え、本格的なイノベーションが始まっている。市場縮小・人材不足の中にあって、その動きは決して守りではない。むしろ、パラダイムシフトと言えるものだ。実際、海外では、すでにインダストリー4.0が動き出し、それは歴史的なイノベーションそのものといった様相を呈している」。

さらに藤野氏は、これからアジア地域で事業展開することは多くのグローバル企業にとって必須事項となっており、その展開方法も大きく変化しているという。

「注目すべきは、自社製品を扱うだけではなく、自社の物流ノウハウそのものをサービスプラットフォームとして新興国に展開するようになったこと。いわゆるサービスの輸出だ。これからはサービスのノウハウをソフトウエアにして展開する時代がくる。現地での人材育成が間に合わないというのは、言い訳に過ぎず、各企業は今後、ある領域では競争し、別の領域ではコラボレーションすることが必要となってくる。もう国内だけで戦っている時代ではない」と解説した。

基調講演
「わが国の食品物流の高度化の課題と新潮流」

上智大学
経済学部経営学科
教授
荒木勉氏

一方、国内の食品物流の高度化の課題と新潮流についてはどうか。物流事情に詳しい荒木勉氏は、「2013年にドイツで本格的に始まったインダストリー4.0は、これまでの大量生産と異なり、マスカスタマイゼーションと言われる。いわゆる、IoTの活用によって受発注の仕組みや生産の効率化を図ることで、個別大量生産、つまり顧客一人ひとりの好みや要望に合わせた製品の生産のことをいう。これは加工の途中でも設計変更できる考える工場、いわばスマートファクトリーを実現するものである。生産ラインにリアルタイムに指示を出し、消費者ニーズに応える。まさに、製造業のサービス化と言えるだろう」。

他方、国内でも食品ロジスティクス4.0と言われる時代が近づいていると荒木氏は指摘する。だが、ドイツや米国の企業と比べ、取り組みは少し遅れているようだ。IoT社会の実現に向けて、今後は自動運転、3Dプリンター、人工知能、ビッグデータなどと組み合わせて、海外勢を追い上げることが至上命題となっているという。

「特にデータ作成と入荷検品の効率化が食品流通の課題。QRコード、ICタグの活用は進んでいるが、実態はまだ追い付いていないように見える。旧態依然とした状況の中で、ドライバー、パートの不足といった労働力問題が追い打ちをかけている。今後は、生産、営業、小売の情報を共有するためにも、重要なポイントとなるのが需要予測だ。これを突破口にして、サプライチェーンの情報共有を実現し、IoTを基盤としたロジスティクス4.0を構築すべきだ。最終的な目標は顧客満足度の向上にある。そのためにいかに情報を生かしていくのか。新たな視点での経営戦略の構築がますます重要になってくる」と分析した。

事例講演Ⅰ
「生協宅配物流の課題と取り組み」

生活協同組合ユーコープ
統合マネジメント本部
本部長代行
生産物流・業務改革担当
岡崎淳氏

ここで個別企業の具体例を見てみよう。まず生協宅配物流の課題と取り組みについて岡崎淳氏は、「現在、われわれの宅配事業では約2800品目の商品を届けている。顧客にはカタログを毎週配布し、OCR用紙、ネット注文、電話注文でそれぞれ受け付けるという仕組みをとる。宅配は週5日、土日なしでワンサイクル。配送センターは32拠点あり、一日あたり全体で約1500~1600コースとなる。1コース約50~90件の配達で、一件当たり約6.8分で配達している。これらを自前の物流網でやっていることが大きな特徴」と紹介。

岡崎氏は、そうした宅配物流を取り巻く大きな環境変化として、人件費の高騰・採用難を挙げる。また、土地のミニバブル化で倉庫家賃の上昇が目立つという。

「通販は伸びているが、自社だけの対応では限界がきている。配送効率を上げるには、荷物の密度向上、共同配送ほか、通販物流やコンビニエンスストアとの提携が必要になる。現在、顧客の要望としてネットスーパー型宅配、移動販売、弁当宅配などの事業があるが、今後は、自前の物流を維持しつつ、上流から下流まで全流域での共同化を模索していく。また、新人でもすぐに作業ができる仕組み、省人化できる機器・システム開発が必要になってくるだろう」と語った。

ショートプレゼン
「食品ロジスティクス4.0を支える物流施設のご紹介」

では、食品ロジスティクス4.0を支える物流施設はどうなっているのか。

野村不動産
都市開発事業本部
物流施設事業部
中村秀人氏

中村秀人氏は、「食品物流センターを取り巻く背景として、ライフスタイル、雇用の変化に応じた新しい流通網に対応できるような都市型食品物流センターが求められている。特に高齢者が増える都市部では配達需要に応えるため都市型の食品物流センターを構築する必要がある」と話す。

野村不動産では今後、新たなタイプの物流施設の展開を目指していく方針だという。

「物流施設では、首都圏を中心に28棟の開発・運用実績がある。効率のよい、無駄のない施設をつくるためのテナントニーズの収集・蓄積を進めている。荷主を見据えた立地選定と施設計画。施設のスペックも工夫し、効率的な保管レイアウトを実現。さらに、余剰容積率を活用し、メザニン床を設置することにより、保管・作業スペースを拡大。アメニティ設備を充実させ、多数の人が快適に働くための良好な環境を提供するなど、幅広いテナントと関係を構築したい」と述べた。

事例講演Ⅱ
「日本アクセスにおける最近の物流事情」

日本アクセス
取締役専務執行役員
広域営業部門長
中井忍氏

次に大手物流企業の事例を見てみよう。最近の物流事情として中井忍氏は、「わが社では全国472拠点、毎日約8500台のトラックが全国を走っている状況である。ロジスティクスにおける現場の課題としては、物流コストの高騰、人手不足が挙げられる。他方、スーパーマーケットでは品出しに時間を要しているという課題がある。物流効率化のためには、物流コストの約50%を占める配送費の削減がターゲットになる。配送費削減のため、配送時間枠、店着時間枠の緩和をテーマにシミュレーションを実施しているところだ。時間枠を緩和しさえすれば、トラックの台数は減る。実際、人件費も下がるという効果もあった」と話す。

もう一つの課題が庫内人件費だが、RFIDタグで、カゴ台車の管理作業が合理化されることにより作業の低減ができているという。

「ハンディ型タグリーダーを利用することで、棚卸し作業もスピーディーになる。カゴ台車の所在が明確に把握できるうえ、誤積込のチェックもできる。カゴ台車の所在把握により、流出や紛失の防止につながる。リライタブルレーザシステムは、レーザー光により、非接触でラベルの表示書き換えを行う印字プロセスだが、約1000回の書き換えが可能だ。人手いらずの印字システムでラベリングに係る作業負荷をゼロ化できる。製造・出荷ラインの自動化・省人化に役立つうえ、少子高齢化に伴う雇用対策にも対応できる」と述べた。

今後は品質確保、納期、店舗オペレーションを組み合わせた効率化を目指し、生産から消費まで一貫した物流網を構築し、お客様起点の物流、全体最適の物流体制を実現するという。

事例講演Ⅲ
「食品メーカーによる物流関連の連携の動き~持続可能な食品物流の実現を目指して~」

味の素
物流企画部部長
堀尾仁氏

一方、食品メーカーによる物流関連の連携の動きについて堀尾仁氏は、「やはりドライバー不足、eコマースの拡大、社会的責任の増大が背景にある。その結果、物流コストの上昇、荷主責任の明確化といった食品物流の課題が発生している。これまでの食品メーカー物流は、企業ごとに個別化して発展してきたが、環境激変により顕在化してきた社会的な課題を解決するには限界がきている」と指摘した。

そこで生まれたのが、F-LINEだ。これはさまざまな食品物流の課題を共有化し、解決に向けた議論のできる場「食品企業物流プラットフォーム」のことを指す。食品メーカー6社で日本全国におけるF-LINEを具現化させるべく検討を行う会議体を構築した。基本理念を競争は商品で、物流は共同でとして、より効率的で安定した物流力の確保と食品業界全体の物流インフラの社会的・経済的合理性を追求する。

実際、16年4月から「納品時間の短縮」「配送の効率化、平準化」を目的に北海道でテストを始めた。結果、配送件数は約16%減、4トン車比率も減少し、平均積載率が向上するという効果が出ている。荷受者の生産性向上につながる納品書も共通化。共配稼働マネジメントの標準化として、共通したKPIも掲げている。堀尾氏は、これまでの取り組みでわかったこと、として次のように強調する。

「共配はゴールではなく、スタートラインであること。今後はモノの動きの整流化をサプライチェーンおよび食品業界全体に波及させることが必要である。中長距離幹線の再構築ほか、食品メーカーから見た製配販提携の整理・体系化を進め、やれることからやってみることが重要だ。サプライチェーンの全体最適を目指し、製配販それぞれがWin-Winとなる活動を推進する。業界におけるダブルスタンダード、トリプルスタンダードを避け、外部団体、行政当局との連携も図っていく。そのために食品メーカー8社でSBM会議(食品物流未来推進会議)も発足させた。製配販の課題をまとめたテーブルを共有化し、言葉の定義も論議する。課題解決を得意先ごとの個別対策とせず、業界団体、行政への働きかけを実践することで、食品業界の標準化を目指していく」。

このように食品物流の新しい取り組みは、すでにさまざまな方法で始まっている。日本企業がグローバルで勝ち残っていくためにも、ロジスティクスの再構築がいかに重要なのか。今後も新たな事例を踏まえつつ、企業戦略の一環として取り組むことが急務となっていると言えるだろう。