女性が輝く会社とは何か 東芝の女性役職者、それぞれの未来を語る
――女性活躍をはじめとしたダイバーシティ推進の、現在の状況を教えてください。
牛尾 「性別、国籍、年齢、障がいの有無によって働きやすさに差があってはいけない」という考えのもとで、ダイバーシティを推進してきました。2004年10月にダイバーシティ推進の専門部署「きらめきライフ&キャリア推進室」を立ち上げて以来、仕事と育児・家事などの家庭との両立、女性従業員がいきいきと働き、能力を発揮できる職場環境づくりなどの支援制度の整備に取り組んできました。この間、満3歳までの育児休職制度や小学校修了までの短時間勤務制度の導入、さらには女性従業員向けのキャリア研修、社内保育所の設置、介護支援の拡充などを実現しています。
――非常に早い段階からダイバーシティ推進に取り組まれていますが、その理由は何でしょうか。
牛尾 一つは事業環境の変化です。グローバル化の進展の中で成長を実現し、企業価値を高めていくには、多様な人材の積極的な活用・育成こそがイノベーションを生み出す源泉となります。もう一つは人材の確保です。これから生産年齢人口が減少していく中で、性別、国籍、障がいの有無に関係なく人材を活用しなければ、将来、人材確保に支障をきたす可能性があります。さらに言えば、2015年の会計処理問題に端を発し、誠実な経営の実現に向けてさまざまな施策を実施していますが、風通しの良い企業風土を醸成するうえでも、多様性は不可欠であると考えます。
数値目標を設定したことで、
取り組みが加速した
――ダイバーシティ推進の成果は出ていますか。
牛尾 たとえば、女性役職者比率について言えば、2004年に0.8%(45人)だったものが、2016年には4.3%(324人※)になるなど確実に成果が出てきていると言えます。これからは経営幹部についてもさらなる登用を進める方針です。また、日本勤務の外国籍従業員についても、この10年で約400人増えています。これらの施策に伴って、会社の雰囲気も変わりつつあると感じています。
※正規従業員ベース
――2020年度末に女性役職者比率7.0%を目標に掲げています。
牛尾 数値目標を設定したのは、女性活躍推進の取り組みをさらに加速させたいからです。数値目標を設定することで取り組みが加速すると思いますし、今後も目標達成に向けて数々の施策を展開していきたいと思っています。
――7.0%の達成に向けて、どのような施策が必要だとお考えでしょうか。
牛尾 若手女性従業員のキャリア支援として、入社3年目の女性従業員を対象とした「キャリアデザイン研修」や「育児後復帰支援セミナー」を開催しています。さらに職場での意識啓発のために、上司・配偶者向けの「育児後復帰支援セミナー」も同時に行っています。2014年度からは女性のロールモデルを勉強してもらうために、異業種の女性交流研修を積極的に行うようになりました。また、女性役職者候補者層向けの研修の充実や、女性のキャリア採用の積極化も行っています。
土光敏夫の指摘は今も生きている
未来のための核づくりが必要
――「新生東芝」を進めていくために、どのような取り組みを行っていますか。
牛尾 現在、さまざまな仕掛けを行っているところです。初めての試みとして、経営幹部向けに「360度サーベイ」を実施し、自らのリーダーシップの資質を多面的・客観的に気づいてもらうことに取り組んでいます。今後はそれを課長クラスにまで広げていきたい。組織というものは、何もやらないと前には進めません。いろいろなことを試してこそ、問題点も浮き彫りになります。
今から40年以上前のことですが、当時の土光社長が「決めたことが実行されない体質が、当社の病根である」と指摘しています。それは今でも十分に通じると考えています。一方で土光は「誰かが核になってやればついてくる。2~3カ所に核ができれば、ぱっと変わる」とも指摘しています。その核づくりをわれわれが担うことができればと思っています。
会社は自己実現の場
――読者に向けてメッセージをお願いします。
牛尾 将来的には、「女性」という括りがなくなってほしい。性別を意識すること自体、まだダイバーシティが推進できていない証左でもあります。
私は「会社は自己実現の場」だと考えています。自分が「真のプロフェッショナル」になれるよう、会社という場を使ってもっと自分を磨いてほしいと思います。