一度の逮捕歴も、一生「検索」され続けるのか グーグルへの削除要請が認められる条件は

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「(1)の『グーグルに対する検索結果の削除請求』については、一般論としては肯定されています。

グーグルは今回のケースで、検索結果は自動的かつ機械的に生成されるものであって、削除義務は負わないと主張していました。

東京高裁は『検索結果が自動的かつ機械的に生成されるものであるとしても、それは抗告人が決めたアルゴリズムを備えたプログラムによるもの』といった理由で、グーグルは責任を負うことを示しています。

この考え方は、すでに各地の仮処分決定や、昨年の大阪高裁判決でも示されており、とくに目新しいものではありません。

もっとも、今回の東京高裁決定では、グーグルのシェアの高さや提供するサービスの重要性にも着目して検討すべき、という、従来の最高裁判決にない基準が示されています」

「忘れられる権利」はどうなっていくのだろうか

(2)と(3)の論点についてはどういう判断があったのだろうか。

「(2)の『過去の逮捕報道はプライバシーなどを理由に削除請求できるか』という点についても、一般論としては肯定されています。

ただし、今回のケースでは『いまだ公共の利害に関する事項』であるとし、結論として『差止請求は認められない』という判断になっています。この理由からすると、ケースによっては、<もはや公共の利害に関する事項ではない>として、削除請求が認められる場合もあると考えられます。

(3)の『忘れられる権利』については、定義や要件、効果が不明確な概念であることと、プライバシー権や名誉権で検討すれば十分だという理由から、『独立して判断する必要はない』とされています」

今後、「忘れられる権利」はどうなっていくのだろうか。

「東京高裁は今回、『忘れられる権利』を完全に否定したのではなく、<現時点で検討の必要がない>と判断したものと理解できます。そのため、今後の議論によって、権利の内容が明確になり、かつ、プライバシー権や名誉権では対応が困難なケースが出てきた場合には、各地の裁判所で『忘れられる権利』が認められるときがきてもおかしくはないと考えます」

神田弁護士はこのような見解を示していた。

神田 知宏(かんだ・ともひろ)弁護士
フリーライター、IT企業経営を経て弁護士、弁理士登録。著書に『ネット検索が怖い「忘れられる権利」の現状と活用』(ポプラ新書)、『ネット社会と忘れられる権利―個人データ削除の裁判例とその法理』(共著、現代人文社)、『最新プロバイダ責任制限法判例集』(共著、LABO)ほか。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所

 

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